北アルプス・オートルート山行報告


日程 : 1999年4月28日〜5月3日
参加者 : A班 村上(L)(会友),奥村,金井,岡安,佐藤(4/29のみ)上林,土屋(ゲスト),小林(4/30から)
B班 杉村(L),長坂(会友),小松,山本,三浦(北海道より),合田,矢口(General Leader)

4/28(水)
上野23:54発 急行能登乗車。車中ではあまり眠れず。寒くて何度か目がさめる。

4/29(木)
富山下車。電鉄富山 ---> ケーブル ---> バスで室堂へ

11:25 室堂出発。天気は曇り。締まった雪の上を歩きだす。ゆっくり高度を上げながら歩く。
12:25 一ノ越着。途中から足がつると言っていた佐藤啓子さんがここで引き返す
ことにする。出発したばかりなのにとても残念。
小山谷を2500m付近まで滑走しトラバース。雪面は固く比較的滑り易い。
途中固まった「でぶり」をトラバースして腿が疲労する。鬼岳と獅子岳の間の沢
をシール登行。獅子岳への急斜面は板をザックに付け登るがステップが切ってあり
楽に登れた。
14:45 獅子岳着。視界が悪く写真を撮ってすぐに滑走開始。
昨日の低気圧通過で新雪が20cm程度積もっており、思わぬ新雪に歓喜を上げて
滑る。直ぐに本日のハイライトのザラ峠の滑走。ガスで視界が悪いが固い急斜面の
上に新雪が積もり小さな表層雪崩を起こしながら滑走。距離も長く滑りごたえ
がある。
15:20 ザラ峠を少し下がった所で休憩してシール登行。しばらく急な斜面をジズザク
に登り、五色ガ原に出てからはゆったりとした斜面を歩く。
17:00 五色ガ原山荘着。小屋の主人の歓迎を受け直ぐに宴会開始。
18時頃から視界が良くなり、4日目の目標の槍が岳がはるかかなたに見えている。
この夜は牛肉と野菜たっぷりの汁と御飯と酒でとても暖かい夜を過ごす。
この山行中最も居心地の良い小屋でした。

4/30(金) 五色ガ原 ---> 越中沢岳 ---> スゴ乗越し---> 薬師岳 ---> 太郎平小屋

3:50 起床。3:30起床の予定が20分寝過ごしすぐに朝食。こんな早朝なのに暖かい
御飯とみそ汁を出してくれている。
小屋を出るところまで小屋の主人が見送ってくれた。
5:00 出発。B班は既に出発済み。行動中は基本的にB班とは別行動となる。
快晴無風の中はるかかなたの槍を見ながらゆっくり歩く。歩きだしてすぐ岡安さん
のシールが片方ずつはずれる。気温が低いため雪質も良く最高の気分。
5:50 鳶山頂上着。
6:20 2360m付近で休憩
7:00 鳶山と越中沢岳の間のコル
8:00 越中沢岳頂上着。急斜面をトラバースして下った後、しばらくアイゼンを履き登行。
岩場の下りで少し緊張するが、急な雪面の下りで気をゆるし少しスリップ。
岡安さんが一度東側の斜面にスリップするが、雪が腐っており大事に至らず。
9:30 越中沢岳とスゴの頭の間のコル(2300m)で一休み後、アイゼンを履いたまま急斜面を
直登。
9:55 スゴの頭着。B班に追いつき大休止。スゴの頭からの下りは最初歩き、途中から滑走。
雪は腐っているがかなりの急斜面。
10:50 スゴの頭と間岳の間のコル着。B班と一緒になり大休止。既に6時間行動しているが
ここから薬師岳への登りが長いのでたっぷり腹ごしらえして出発。
岡安さんの調子が良くないのでアイゼンと共同の食料を預かる。
12:00 スゴ小屋の前を通過。屋根だけ出ている。我々は気が付かなかったが小屋の回りには
   熊の足跡がたくさんあったらしい。間岳,北薬師岳も遠く荷物が肩にくいこむ。
13:00 間岳の手前2500m付近で休憩。
13:20 出発。かなりばてている。
14:10 2700m付近で休息。間岳のゆるいピークは気が付かずに通過した。
15:30 北薬師岳頂上着。遅くとも15時に薬師岳に着きたいという予定だったが大幅に遅れて
いる。
北薬師岳と薬師岳の間のコルで遅れているB班の杉村さんと山本さんと合流。
山本さんが貧血をおこしてふらふらしているため、ザックからアイゼンとスコップの
柄を無理やり出して預かる。
村上さんの携帯電話を借り自宅に電話。第一声は「生きてるよ」。
山本さんがスリップしないようぴったり寄り添い、山本さんのペースで登る。
自分もばてばてなので丁度良いペース。
17:00 予定より2時間遅れで薬師岳山頂着。B班と合流。写真を撮り少し休憩してすぐに出発。
頂上直下の東側が切れ落ちている斜面を板をはいて階段下降。ここだけは本当に恐かった。
途中板をはずして夏道をしばらく歩くがこれは失敗だった。夏道を抜けてから、スキーで
滑ってこれた事がわかった。
17:40 北薬師岳避難小屋の前でA班がそろうのを待つ。風が強く体が冷えきった。
A班のメンバーがそろい滑走開始。全身の筋力を使い果たした後の、がちがちに
凍った斜面で全くターンができず情けなくなる。途中で岡安さんと山本さんのアイゼンを
村上さんに預けて、少しターンができるようになる。
北薬師岳と太郎平の間のコルまで滑り小屋まで最後の登り。
日本海に日が暮れて富山湾が真っ赤に染まるのを右手に、左手には昇り始めた満月
を見ながら、最後の力を振り絞って小屋を目指して歩く。
19:00 太郎平小屋着。行動時間14時間に及ぶ自分の体力と技術の限界を思い知った一日であった。
30分程程遅れて全員到着。神岡新道を1人で登って来た小林みち子さんと合流。

5/1(土) 太郎平小屋 ---> 北の俣岳 ---> 黒部五郎岳 ---> 三俣蓮華岳---> 双六岳 ---> 双六小屋

5:00 起床。昨晩頼んでおいた弁当で朝食。
6:15 今日も快晴の中を出発。北の俣岳までのゆるい斜面をゆっくり登る。白山がかなり近く
見える。
8:05 北の俣岳着。ゆっくり休んで、滑走開始。久しぶりの快適な斜面をしばらく滑り、後は
長い斜滑降。
8:50 鞍部でシールを付けゆっくり歩く。しばらくはゆるい登り。黒部五郎岳への急な登りの
取り付きで休憩。
9:45 ここから上林がトップで歩きだす。B班はいつものように各自勝手なルートで登っている。
遅れる人が出ないよう折り返し点で力を使わないよう、ルートを考えペース配分しながら
ゆっくりゆっくり登る。それでもペースが速いと村上さんや奥村さんに注意される。
10:35 カールの滑り出し地点到着。全く疲ず50分で到着。土屋氏と上林の若手2名のみ空身で
黒部五郎岳のピークを目指す。
11:00 黒部五郎岳山頂着。写真を撮って、すぐに滑走開始。B班は尾根伝いに滑るとの事。
締まった斜面でターンし易く久しぶりにスキーをした気になる。カールの入り口まで
戻り、直ぐにカールの滑り出しにかかる。
滑り出しは垂直に見えるような急斜面で、ダブル・ストックのジャンプターンで
しばらく降り、途中から快適な急斜面となる。急斜面が終わると黒部五郎小屋までの
快適な斜面をかっ飛ばす。
11:30 黒部五郎小屋着。コーヒーをわかしゆっくり昼食。快適な斜面を滑った後なので皆
明るい顔で話がはずむ。B班が少し遅れて到着。途中で単独行の直井さんに会ったとの事。
12:25 A班が先に出発。三俣蓮華岳への雪の腐った急斜面を登る。トップは奥村さん。
稜線に出てから風が強くなり、ヤッケを着込む。
15:00 三俣蓮華岳山頂着。槍が岳や穂高連峰が目の前にそびえ立っている。
すこし雲が出はじめる。皆で写真を撮り、村上さんの携帯電話を借りて自宅へ電話。
シールを付けたまま丸山とのコルまで滑りまた登り始める。
双六岳へは土屋氏と上林の2人のみ行くことにして残りのメンバーは双六小屋へ直行。
16:30 双六岳山頂着。B班と合流。写真を撮って直ぐに滑り始めるが急に雪が降りだす。
斜面の表面がまた凍り始めて滑りにくくなり2度こける。
今日はあまり疲れを感じなかったがやはり足の筋肉は疲労しているようだ。
17:00 双六小屋着。奇麗な大部屋に全員詰め込まれる。
早速ストーブのある1階の談話室と大部屋に別れて宴会の始まり。
今日はダイナミックな滑走有りのとても楽しい1日だったので話がはずむ。
夕食後も酔っ払いになった三浦先生を含めて消灯まで飲み続ける。

5/2(日) 双六小屋 ---> 樅沢岳 ---> 西鎌尾根 ---> 槍岳山荘 ---> 飛騨沢 ---> 新穂高温泉

6:00 朝食。昨晩は緊張が解けたせいもあり久しぶりに熟睡する。
7:20 写真を撮って出発。今日も晴れ。小屋の直ぐ前の固い斜面をクトーを付けて登る。
8:00 樅沢岳着。ゆっくり休憩。これから縦走する西鎌尾根の先に槍が岳がくっきりと見えている。
ここからスキーをザックに縛り槍岳山荘までの長いアイゼン歩行。トップは上林に交代。
樅沢岳の下りは両側が切れ落ちた細い稜線で慎重に下る。
雪とガレ場のミックスした稜線をひたすら歩く。奥村さんのアイゼントラブルも含めて
休憩が多くあまり疲れないが、板とザックを背負った肩にだんだん荷物がくい込んでくる。
細い稜線歩きが続き後ろをふりむく余裕があまり無く、だんだんと間が開いていく。
途中から金井さんと上林で先行して歩く。
13:30 千丈尺乗越。あまりばらばらになると危険なので村上さんの指示で上林,金井,土屋の3名
と村上,奥村,岡安,小林 の2グループに別れて行動する事にする。
13時には槍岳山荘に着きたいとの事であったが大幅に遅れている。
千丈尺乗越から上はかなり急な雪渓歩きで足を滑らせたらすぐに200m位は滑りそうな斜面。
B班の付けたトレースがとてもありがたく感じる。
15:05 最後の固い斜面を緊張してトラーバスして槍岳山荘着。予定より2時間遅れ。
B班と合流して喜び合う。合田さんだけ槍ガ岳の山頂に向かったとの事。
小屋の周辺は人が多い。槍沢からもたくさんの人が登って来る。
しばらくしてA班の残りのメンバーも無事到着。ビールで乾杯。
16:00 スキーを履き、飛騨乗越に移動していよいよ滑走開始。広大なカール状の斜面が続いている。
上部は少し固まり始めて滑りにくかったが、程なく適度に緩んだ斜面に入り快適に飛ばす。
皆スキーとザックを背負って8時間も歩いた後なのに素晴らしい滑りをしている。
ランドネのレベルの高さを実感する。
途中から左側のまばらな樹林帯に入るが、だんだんと雪がくさり初める。
快適な斜面が終わり、沢沿いのだらだらの斜面を下る。だんだん雪が少なくなり雪が
残っている所を探しながら下る。槍平ではテントがたくさん張ってあった。
17:30 滝谷の少し先でとうとうスキーでの滑走が不可能になり板をザックに縛って歩きだす。
後続のメンバーを待つかどうか相談したが、暗くなる前に林道に出たいという事で村上,
金井,上林で先行して歩く。真っ暗になる前に白出沢出会いに到着。槍岳山荘で買った
ビールを飲む。スキーで滑れそうな雪面が見えたので喜びいさんで板を履いたが20m位で
終わってしまいがっかり。19時頃完全に暗くなるがぼんやりと見える林道をひたすら歩く。
19:50 穂高平小屋で矢口さんが、小屋の主人に遅れてくるメンバーをマイクロバスで送ってもらう
事を頼む。ここから土屋氏のヘッドライトを頼りに新穂高温泉まで歩く。
20:35 もう限界という頃、新穂高温泉到着。桜木荘の主人がバスで迎えに来てくれている。
村上さんに温泉に入ろうと誘われるが靴を脱ぐ元気も無くへたり込み残りのメンバーの
到着を待つ。21時頃までに穂高平小屋のバスも着き全員到着。
今日も行動時間は13時間に及んだ。

乗鞍高原の桜木荘に着いたのは22時。風呂に入り、23時頃ようやく宴会兼夕食。
桜木荘ではまさか今日下山して来るとは思っていなかったとの事。
1時半頃一度ふとんに入るが三浦さんにたたき起こされ、ウィスキーを飲む。(飲まされる)

5月3日(月) 桜木荘 ---> 松本 ---> 東京

9:00 朝食。のどが痛みくちびるがはれあがり、口をあけると痛む。
昨日の最後の林道歩きで、両足の親指もはれあがりびっこを引き歩く。
10:00 桜木荘のバスで松本まで送迎してもらう。松本で昼食を取るメンバーと別れ、奥村,杉村,土屋、
上林の4名だけ先のあずさで帰宅。車中ではずっと酒を飲み続ける。

上林 記