火打山〜空沢尾根〜笹倉温泉 山行報告

期日 2000年4月8日(土)〜9日(日)
参加者 8人 CL奥山修司、SL岡安トキ、小林迪子(会計)、村上静志、
      上林裕之、合田英興(食料)、土屋秀二、杉原鉄夫(記録)
コースタイム
杉ノ原スキー場・ゴンドラ駅発915……第3高速リフト終点1027〜35…(昼食1150〜1220)…
三田原山1333〜1357――黒沢池1415〜30……茶臼乗越1459〜1507……高谷池ヒュッテ着1520(泊)〜
発722……火打山肩846〜56……頂上922〜45――2030m地点1005〜15――賽の河原手前1035〜1100―
−昼食など―笹倉温泉着1255(解散)
滑降の標高差2000m、距離20数Kmという日本で最高レベルの山スキーコースの一つ。ポピュラーな
影火打コースではなく、空沢尾根コースを選んだが、滑降スケールは十分だった。

4月8日(土)
夜行列車は辛いと全員が一致して、前泊して体調を整えた。朝、連山荘で上林さん・合田さんも
合流し、杉ノ原ゴンドラ駅を出発。第3高速リフトが前週で終了のため、1時間半近く登りが増えた。
第3リフト終点から本格的なシール登行が始まる。リーダー奥山さんがやや体調不良のため、サブ
岡安さんが適切なペースで先導。ラストを会友のベテラン村上さんがガッチリと固めてくれて、
安心な気持ち。ほぼ快晴のため、暖かい。クラストにもほとんど悩まされず、三田原山の稜線へ。
途中で、東京を朝出発した「自然を滑る会」(15人。うち数名は前日に小屋入り)などに抜かれる。
黒沢池の雪原が見えるところまで稜線を進んで、シールとクトーを外す。右手目前に、妙高山の
まだらな山肌が迫る。ここから黒沢池までが実質的に、今日ただ1回の大滑降。樹林を縫って、
思い思いのコースを滑る。池のあたりには、広大な雪原が広がり、面白いようにスピードが出る。
茶臼乗越への斜面が始まるところまで、一直線のスピード滑降で着いてしまった。
再びシールを貼り、ゆっくりと登り返す。茶臼乗越からも、シールを外さない方が楽だ。
高谷池ヒュッテ着は15時を過ぎていた。3・4階しか使えないため、ほぼ30人が入ると満員状態。
備付けの寝具はとうになく、各自持参のシュラフが大いに役立った。ここで、土屋君には、若者
に珍しい対外交渉力があることを認識。彼が笑顔でスペース割譲を依頼し、快く譲ってもらって、
夕食のスペースを確保。メニューは、グルメで売出し中の合田シェフ自慢の「海鮮ポトフ」という
豪華さ。

4月9日(日)
朝日に輝く後立山連峰の銀屏風を前景に、ゆっくりと用を足す。これこそ、快調なペースで登る
ための必須条件だ。天狗の庭は、一面の雪原。火打山の肩まで、尾根左側をトラバースしていく。
奥山さんも快調で、すっきりした表情だ。足元がややクラストしていて不安になる。村上さんの
「トラバースでは、並んで歩くと一人が滑落しても玉突きを引き起こす」など適切なアドバイスが
有り難い。標高2300mの肩で、頂上へは急登だからスキーアイゼンでは心配な自分は、一人だけ歩行
アイゼンに履き替える。だが、陽が当たったためか雪は先ほどのトラバースよりも柔らかく、シール
とクトーの方が楽だった。ジグザグ登行を何回か繰り返して、火打山頂上へ。ヒュッテ泊まりの全員
がいるのでは、と思えるほど大人数だ。すぐ西に焼山が黒々と大きく、北には鉾ケ岳が均整の取れた
姿を見せている。滞頂20分で、空沢尾根へ出発する。笹倉温泉へは影火打コースを取る人が多く、
こちらは2パーティーだけ。雪の付き方は、全く問題なかった。2245mのドーム(2万5千図の池記号)
から北北西に転じ、空沢尾根に入る。1740mの標高点に向けて滑降という記録もあるが、我々は1本
手前の尾根の南側へ2030m小平地から入って大滑降を堪能する。さすがランドネの精鋭メンバー。
自由自在に大斜面を滑りまくっている。特に、村上さんと土屋君はさらに1本南の急斜面を滑ってい
た。恐くなってキックターンなどでお茶を濁した自分が恥ずかしいが、実力の違いは如何ともしがた
い。ようやく斜面が和らぐと、滑ってきたコースを振り返る余裕が出てきた。1400mあたりは「見返
り平」とでも呼びたいところだ。賽の河原を渡る手前で大休止。背後から、火打山と焼山が大きく
のしかかってくる。 やや心配していた賽の河原の雨裂溝は、全く問題なかった。十分な積雪があり
スノーモービルも直進して渡渉(?)しているほど。広々とした焼山北面大地を、気持ちよく一直線に
滑っていく。高度が下がると雪質が悪くなる一方で、天気は良いため、汗ばむほどになってきた。
アマナ平の前後など一部に小さな登り返しがあるものの、概ね容易なコースだ。ただ、モービルの
跡につられて安易に低いところへ滑り降りてしまうと、引き返す羽目になる。林道の感触がはっきり
してきて、後は楽勝と思ったら、最後に肝を冷やした。新田山を対岸に見るあたりは残雪が多く、
林道雪面が左側の断崖に落ちる斜面になっているのだ。最後に、火打山川の橋をスキーを脱いで渡
る。水田の畦を滑って待望の笹倉温泉に無事到着し、解散。希望者は一浴を楽しむ。急ぐ4人は
タクシーで、残り4人は15時48分の定期バスで糸魚川方面へ。バス組のうち、帰京する2人は途中の
梶屋敷駅で下車し、白馬方面へハシゴスキーを予定している2人は糸魚川駅へ出た。
月並みな表現だが、「山良し」「人良し」「天気良し」と三拍子揃った大満足の2日間だった。
奥山リーダーをはじめ皆さん、ありがとうございました。

[費用]
○ 東京=(長野新幹線)=長野=妙高高原
 9010円
○杉ノ原ゴンドラ 1000円
 (第3高速リフト 500円)
○笹倉温泉=糸魚川 バス 770円
○ 糸魚川=(ほくほく線・上越新幹線)
 =東京 10,130円
○連山荘
 1泊朝食・送迎付き 5700円
○高谷池ヒュッテ 素泊 1000円
○ 笹倉温泉 一浴 800円
○ 食事材料費
 夕食=930円 朝食=250円

[参考]
空沢尾根も十分な滑降スケール
築田博氏のガイドには「雄大さに欠ける」とあるが、滑降スケールは十分。影火打コースを何回
も通ったことのあるベテランに聞いても、同意見だった。4月第1週末が山行適期
 第3高速リフトが動く最終週末(通常は4月第1週)が賢明。東京を長野新幹線始発で出ても、通常
ペースなら15時には高谷池に着く。高谷池ヒュッテの寝具は10組。寝具が少ないので、当てにしない
方が賢明。込むと室内は暖かいから、銀マットとシュラフカバーでしのげる。
賽の河原を渡る同ガイド「1950mの等高線沿いに進み、賽の河原を渡る」は「1350m」の誤りか?
糸魚川→東京 越後湯沢行き特急「はくたか」自由席・禁煙車は1両だけのため、まず座れない。
定期バスに接続する列車の指定席を取っておくと安心。

杉原 記