裏岩手山行報

2001年(平成13年)3月3日−4日

猪俣恵美子

3月3日(土)快晴
 大宮6:30発「maxやまびこ31号」に乗って盛岡9:29到着。「たび割7きっぷ」は往復¥13600と格安なので利用しない手はない。ただ一週間前に指定席を確保することが条件というのが難点ではある。待合室にはすでに兼用靴でスタンバイしている村上リーダーが待っていた。網張温泉行きバスは10:45発とのことで準備をすませる。荷物をもって避難小屋泊まりの山スキーというのは初めてなので、何をどうしたらいいのか分らないことだらけの私は不安で一杯である。極力軽量にするようにとのことだったが、寒さに弱い私としては防寒対策に頭を悩ませ、やっぱり自分は山スキー向きでないのかもと思ったりした。いつだって重いのはもちろん嫌ではあるが、かといって寒いのにも耐えられそうにない。小さくしたつもりだったがリーダーはザックを持ちあげ少々シブイ顔。これではやっぱり無理かと心配になる。
 網張温泉スキー場に11:40着。リフトを乗り継いで終点からシールをつけてひと登りでもう稜線!素晴らしい好天に恵まれて360度の大展望に感激である。白い岩手山が大きく迫る。いつか登ってみたいとあこがれていたが雪をまとうと一段と素敵。目指す三ッ石山から大深山への稜線が続いているのが見える。いきなりシールをつけたまま滑り下りると言われ緊張。いくっきゃないと覚悟をきめリーダーの後を追う。スキーコースから外れて縦走路へ。新しいトレースがあった。今日はだいぶ人が入っているようだ。潅木の中を小さくアップダウンしていくのだが、ついて行くだけで必死である。足を滑らせて歩くことがなかなかできなくて注意される。歩くのも難しいのだ!大松倉山への上りにかかる。斜度があるので下手な私に合わせてリーダーはジグザグをきってくれた。強風の時は危険と聞いていたが、乳頭山から秋田駒ケ岳方面も近くに見えて実に穏やかだ。細長い頂上の西端から三ッ石山荘が見下ろせる。時間によっては大深山荘まで行きたいとのことだったが、ここで三ッ石山往復後、山荘泊まりと判断が下され、私はホッと胸をなでおろす。三ッ石山に先行パーティが取り付いているのが見えた。シールを外して山荘まで滑る。
 山荘は半分雪に埋もれていて入り口は半地下状態。先行パーティも山荘泊まりとのことで荷物が置いてあった。三ッ石山へ上りはじめると彼らが上からさも気持ちよさそうに滑ってくるのが見えた。30分の急登で頂上へ。風に吹き飛ばされたかガリガリで岩も出ている。暖かかったせいかはや夕方のせいか景色は霞んできていた。3時をまわりさすがに寒い。明日行くはずの大深山への稜線に心惹かれる。ルスツに行っている友人にメールで感激を報告後、いよいよお楽しみの滑降だ。あっという間だったけど私としては十分満足。でもリーダーや小松さんの滑りが羨ましい!上手になりたいなと心から思う。
 山荘でははや宴たけなわ。仙台の山スキーの会と大学生の二パーティ10人と、今宵はあわせて15人が泊まることとなった。十分なスペースをもらって、リーダー持参のきりたんぽ鍋を囲み(これがメチャおいしかったのだ!重いのに・・・感謝!)楽しい一夜となった。仙台のメンバーの中に一月の船形山で出会った人がいてリーダーは偶然の再会に驚くやら喜ぶやら。
 
3月4日(日)曇りのち雨
 予報どうり、朝目覚めると濃いガスにつつまれていた。残念ではあるが大深山は諦めて直接松川温泉に下ることになった。ミルク色の世界をトラバースしてルートをとり、ツアーコースにしっかり出たので本当にすごいと感心するばかり。快適な下りが続いてゴキゲンだったが、気が付いたらいつの間にかコースをはずれていたようで、そこからが私にとっては大変だった。崖のようなところを下ったり、トラバースしたりまさに野趣あふれる初体験!圧巻は木の枝にぶるさがり宙ずり状態となり、沢に落ちようかというところを助けてもらうしまつとなる。空からは雪ではなく雨が落ちてきて、だんだん強くなるもよう。少しも動じないリーダーに不安は感じられず、皆あたりまえのように落ち着いているので、これが普通なのかとショックは大きい。ついていくだけで必死だった。松川温泉に下りつきバス停前の旅館まで登り返す。雨はとうとう本降りとなる。
 まずは乾杯!ビールのおいしかったこと!それからもちろん温泉、締めくくりに岩魚の塩焼きとおそば。ウーン最高に幸せ!「今日のでビビッチャいけない!ほんの序の口」とのリーダーのお言葉にも、皆の笑顔で「フーンそうなんだ!」となんとなく納得してしまった。すっごく楽しかったんだけど危ない世界に足を踏み入れているのかもと若干不安!思いは千千に乱れるけど「大丈夫」とのお言葉を信じてまた来たいな!初心者の素直な感想でした。盛岡から新幹線で帰京。大宮20:08着でした。