雪倉岳  

烈風をついての登頂に大きな達成感

2002年3月21日(木)〜24日(日)
参加5人 村上靜志(L) 小松はる子 池田和行(タイム) 木村由佳里 榊陽(記録)

21日 曇 風強い
朝、栂池高原のゴンドラ乗場に集合。見通しは良く、後立山北部の山々を見ることができた。始発ゴンドラ(8:00)、栂第2ペアリフトを乗り継ぎ、栂の森ゲレンデから、天狗原に向かう林道の入口へ滑り込む。シールをつけ、4日間のツアーの第一歩が始まる(8:50)。自炊のための食糧や炊事道具でザックは膨れ上がり、すぐに汗ぐっしょり。11:25天狗原に着くが、そのまま進み振子沢を少しくだってから風を避けて昼食(12:00)。その後、緩んできた雪に悩みながら、13:00にバス道路に出る。13:15蓮華温泉着。温泉に飛び込んで、冷えた体を温める。

22日 曇
尾根筋は風が強く、見通しも悪い。6:40蓮華温泉発。兵馬ノ平を少し行き過ぎ、滝見尾根の下部を乗り越すまでに時間をロスする。雪倉の滝正面付近で瀬戸川を渡り、登路を吟味。滝がすっかり埋まっているので、ここを詰めることにする(8:00)。その後、左側に回り込みながら急登を続け、10:40に雪倉山頂から続く大斜面に出た。
風が冷たく吹きつのり、見通しも効かないので、少々心細い。村上リーダーの的確なリードで、一歩一歩山頂に向かう。大分くたびれた頃、リーダーの「山頂はそこだ」の声に元気を取り戻し、烈風の山頂を踏む(13:40)。
「たとえ展望は効かなくても、山頂を踏むことができたかできないかで、達成感に大きな差が生じる」(池田さん)が、今回は特に長いアルバイトの後だけに喜びもひとしおだった。
この天候では、シールをはずすことも食事をすることもできない。ひとまず、シール・クトーを付けたまま安全な所までくだり、シールを外して滑降に移る。斜面はアイスバーン(蒼氷までは固まっていない)と新雪が縦じま模様に入り混じっているので、慎重にくだる。やっとアイスバーン地帯を脱し(15:00)、遅い昼食を取ろうとするが、体は水分ばかり欲し、固形物を飲み込むのに一苦労。その後、雪倉の滝を無事滑降し、瀬戸川に出る。
ここまで来ればもう少しのはずであったが、蓮華温泉に出る等高線沿いのルートが見つからず、降りすぎてしまったため、疲れた体にはこたえた。17:40温泉帰着。雪倉の滝上部まで一緒だった北海道のチームの方々(途中から引き返した)が、心配しながら待っていてくださった。感謝! 今日は温泉もビールも格別。

23日 吹雪
朝までに50cm以上積もる。朝日岳を断念し、終日のんびりと停滞。
24日 曇のち一時晴、のち雪
7:45蓮華温泉発。昨日断念した朝日岳がよく見える。中ノ沢から振子沢にわたるべきところをそのまま尾根沿いに登ったので、白馬乗鞍から北に派生している尾根の1942m標高点に登ってしまった。しばらくは尾根の中腹をトラバースしていたが、雪崩の危険を避けるため、いったん振子沢の途中まで下り、天狗原に出る(13:00)。
スキー場までは重い深雪の中、重荷を背負って、くたびれた体に鞭打ちながらくだる。さらに、ゴンドラ乗場までの長かったこと。でも終わってしまえば、また行ってみたいと思うのが、山スキーヤーの宿命なのでしょう。ゴンドラ乗場着14:20。一風呂浴びて、白馬発17:25の臨時あずさで帰京。

記録者=榊の感じたこと
体力 村上リーダーや若い方々の励ましで、何とか頂上を踏むことができたが、以前に比べてかなりくたびれた。昔の記録を引き出してみると、過去2回はいずれも50歳代後半のことであった。体力もあったし、トレーニングも今の倍以上していた記憶がある。要するに、体力不足なのである。年々衰える体力に逆らって山行を続けようとするならば、厳しいトレーニングを課さなくてはならないという自明のことがよくわかった。これからも頑張りますので、皆さんよろしく。
食事と荷物 自炊のために食糧や炊事用具を持ったので、荷物は出発時に15kgを超していた(滑走用具を除く)。各自工夫した料理を味わうことができ楽しかったが、滑りを楽しむという点では疑問が残る。ヨーロッパのオートルートでは、荷物は極力減らされ、8kg以下が普通である。山小屋の対応が違うので一概には言えないが、例えば夕食は小屋に頼むなどして、荷物を減らす工夫があっても良いのではと感じる。
滑落 雪倉岳山頂から下山するとき、アイスバーンでバランスを崩し、滑落した。頂上で皆の写真を撮っているうちに遅れ、慌てて追いかけたのであるが、直接の原因はシール・クトーをつけたままくだったことにあると思う。私は通常、クトーの食い込みを確実にするために登行支柱を立てない。ところが、雪が間に入り込み、これを踏みつけるために固まり、段々支柱が高くなったのと同じ状態になった。こうなるとクトーは効かず、さりとてエッジを効かそうと強く踏み込むとクトーが邪魔をする。少々あせって、スキーを雪面に叩きつけているうちにバランスを崩して転倒し、下に向かって滑り出した。体を1回転させ、頭を山頂側に、左体側を雪面側にして、右手のストックを立て左手でリング上部を抑え雪面に押し付けると、ストック先端が刺さって止めることができた。滑落距離は30m弱。傾斜が20度強で蒼氷のようには硬くなかったことが幸いした。滑落防止はスキーでは練習したことはなかったが、いつもイメージしていた。今回はイメージ通りにできたが、もっと急斜面、硬い蒼氷などの場合には停止不可能だっただろう。こんな斜面には入らぬことが肝要である。余談だが、私が遅れていたので、この滑落を誰も見ていなかった。