北ノ俣岳〜黒部源流

高山病になりました!

4月27(土)〜5月3日(金)
●参加4人 金井多計子(L)、岡安トキ(SL記録)、布目和子、長坂末男

4月27日
大月18時=途中夕食=新穂高温泉キャンプ場22時 テント泊
連休前半の方が好天との判断で急遽、所用を解決。長坂車で新穂高温泉へラクチン山行となった。

4月28日 快晴
1350m車道終点8:50・・・・飛越トンネル9:25〜40・・・・2040m北ノ俣避難小屋15:20
 飛越トンネル手前から、雪の車道を35分歩いて登山口へ。稜線過ぎた辺りまで雪なく、25分歩登行でシールとなる。神岡新道は変化に富んだ山容が展開し、なかなかいい登山道でした。北ノ俣の避難小屋も良かった。ドアを開ければ頂上に続く大斜面が眺められ、裏には一歩離れてきれいなトイレ、床にはマットが。小さな木製の食台があり、作った人のぬくもりが感じられる。定員は10人位か、今夜は我々の他に3人組のみ。

4月29日 快晴
避難小屋6:35・・--2788m黒部五郎岳乗越12:30〜13:05−−・2057m奥黒部出合14:20・・・・2350m16:45 テント泊
 小屋からは雪の大斜面をひたすら登って北ノ俣岳へ。これで5回目の頂上だけれど、初めて西方から登って立派な山だと気がつく。いつもは先を急ぐあまり、単なる通過点だったけれど・・それに今回はテント山行で急ぐことはなく、ゆっくり山を楽しめる気分。
 黒部五郎の登りは以前、村上パーテイで登ったルートを金井さんが上手くトレースしてシールで登りきる。雪が緩んでいて楽だった。黒部五郎のカールから五郎沢を奥黒部出合まで、あこがれの滑降だった。出合の出水平で会山行の青木パーティーに会う。黒部五郎小屋泊まりの彼らと夢の楽園での邂逅を喜び合う。・・午後の明るい光の中で奥黒部の秘境をスキーだからこそ行ける幸せを味わいつつ歩く。谷が狭まり源頭の趣になってきた頃、右岸に白樺の点在する格好の台地があり水場も近い。

4月30日 終日、風雨   黒部源流2350m テント停滞
 激しい風雨の音で、あまり眠れなかった。雨の弱まる間がなく、外に出るのが難儀なので極力水分を摂らないようにして、シュラフに半身くるまって過ごす。個人のナイロンテントは、長坂さんの指導で風上と山側にブロックを積んで固めたためか風雨に耐え、炊事の湯気で結露する以外濡れもなく、床のシミは少々出たが強力なガソリンコンロですぐ乾き、快適な停滞日を過ごせた。夕食時、持参の焼酎を、飲めない私が少々飲んだ。消灯後寝ていて胸が苦しくなり、酸欠?と思ったが、火はないし皆は気持ちよく眠っている。一日テントに閉じ込められた心因性かと思い、睡眠薬を飲んで眠った。

5月1日 10:30頃まで雨 のち晴れ
黒部源流テン場11:00・・・・2730m岩苔乗越13:50〜14:35--・・2510m三俣小屋下方 テント泊15:30
雨は朝方まで激しく、一旦やんだのでテントをたたんだらまた降り出した。水晶小屋裏にテント設営の予定なので、急ぐこともない・・とテントを張りなおす。
朝一で外に所要で出た時、異常に息切れがして、深呼吸を繰り返しても酸素が入っていかない感じがした。出発時、「低血圧なので、動いているうちに良くなると思うから、ゆっくり行ってね」と岡安をトップに超スローで源頭部へ向かうが、体調戻らず、最後の急斜面では20歩スローで登って息継ぎタイム30回を繰り返し、普通なら1時間強で行けるコースを、3時間かかって岩苔乗越に着く。
「岡安さん、それ高山病じゃない?」と海外経験豊富な布目さんが言う。「そうじゃないかと思うのよ」と私。ここから水晶小屋までは雪が無く稜線を歩く。東沢乗越から快適に東沢を滑れるとの情報を得ていたが、さらに高度を上げて水晶小屋へ行くことは中止にせざるを得なかった。それよりも安全に下山することを優先に、今日は三俣蓮華小屋周辺まで行ってテント泊とすることになった。本当に申し訳なかったです。
三俣小屋へは黒部源頭部から鷲羽岳の西面を快適に巻いて滑っていく。下りは息継ぎタイムを十分に取ってもらい、普通に滑りを楽しめた。少しの登り返しで三俣小屋北下方の斜面を削り快適なテント場を作った。(長坂チーフ)ここのロケーションは素晴らしい! 鷲羽、水晶、雲ノ平、薬師、黒部五郎・・まさに北アルプスのど真ん中だった。

5月2日 快晴
コースタイム 三俣テント場9:35・・三俣蓮華岳東面を巻く--双六小屋13:00泊
 当初のプランは弥助沢を滑ってモミ沢を登り、大ノマ乗越から一日で新穂高に下山の予定だったけれど、登り高差の少ない三俣蓮華岳越しに行って、双六小屋泊まりに。
 昨夜も気分よく食事が出来テント生活を楽しめたが、登りになると息切れ激しく、超スローで付き合っていただく。三俣蓮華岳東肩・2750Mの台地から大カールを長坂さん先頭に上手くトラバースして、ほんの少しの階段登りで双六小屋に。こんな快晴の日には、沢ルートよりもこちらの方が正解だったと思えるほど素晴らしかった。
双六小屋は4連休の前日でガラガラ、素泊まりの我々にも食堂で食事していいと対応が良い。食料はここで使い切る。ストーブの談話室でのんびり出来、とても休養が出来た。

5月3日 快晴
双六小屋7:40・・・・弓折岳春路下山口11:05〜25--橋12:25--ワサビ小屋先まで滑る・・新穂高ゲート14:30=温泉入浴16:10=途中夕食=大月21:00
 弓折岳につづく稜線は雪がなく、人々は夏道を歩いて行くが、我パーテイは不調の私が楽なようにと稜線沿いに斜面の雪をつなげて上手くルートを取り、最後の弓折岳までシールで登れて助かった。でも、途中あまりにも私がしんどそうなので、とうとう個人装備のほとんどを、皆に持ってもらったのでした。大感謝!
 くだりのコースは、弓折岳真南に落ちる春路と呼ばれている沢を滑り、2150m位で大ノマ乗越からのルートと合するが、最近はほとんどの人が春路を行くようです。4連休初日のこの日、大勢の人が登っているそばを滑り降りるわけで、絶対にコケてはならないのでした。さいわい秩父沢からのデプリは小規模で例年に無く滑りよかったし、ワサビ小屋の先まで林道を滑れた。ゲートに着いたら、先に長坂さんが車を回してくれていて、ありがたく奥飛騨の芽吹きの春をめでながら帰路についた。

費用 新穂高温泉=飛越トンネル手前 タクシー1万6980円 濃飛タクシーTel0578-2-1228
   双六小屋 素泊まり5500円  帰り新穂高村営駐車場 1日 600円

2350mでなぜ高度障害に?
 山で高度障害を起こさないためには、十分に水を飲む、アルコールはいけない、適当に体を動かす、が鉄則だったのです。
 私は水をあまり飲まないで登山してきたので、今回もかなりハードな1日目、2日目も400cc飲んでいなかった。そして、雨停滞の一日、終日シュラフに半身入って動かず、食事以外に水を摂らなかったうえに、普段飲まないアルコールを飲んだ。これ全部、当てはまります。息切れが激しく登るのが大変でしたが、幸い、頭痛や吐き気はなかったので、パーティーの皆さんの助けで自力下山できたのです。本当に大迷惑かけました。仲間の友情に感謝しています。
 帰宅して2週間経つのに、まだ心臓がドキドキして本調子でないのです。「飛行機のエコノミー症候群と同じですよ。水をしっかり飲んで、出して、体を動かせない環境なら、足の裏を立てたり下げたりの運動だけでも違います」と医者に言われました。
山歴ばかり長い私が、今ごろこんな初歩的なことが分ったという、お恥ずかしい話ですが、「ハットヒヤット」の一つとして、書きました。

(記録:岡安)