巻機山周辺沢滑り
日程:2003年3月15日(土)〜16日(日)(前夜出発)
メンバー:大坪俊郎(L、記録)、金井多計子(SL)、小林迪子(会計)、中館敏子(写真撮影)、石黒裕二(ゲスト)

3月14日 夜9時JR西荻窪駅で東京在住の女性3名(金井・小林・中館)と大坪が合流し、関越自動車道を北上し、塩沢石打ICを出て清水集落に到着したのが深夜12時であった。今回の宿舎は米子沢橋への林道入口に位置する民宿「やまご」である。12時に玄関の戸を開けたらおばさんが待っていてくれて部屋に案内してくれた。やまごの良心的サービスは後尾に記す。ゲストの石黒君が深夜1時に小平市から別途到着、翌朝6時半の朝食に今回のメンバー5名全員の顔が揃う。

3月15日(土)薄くもり後晴れ、ニセ巻機から米子沢を滑走、行動時間:8時間
 朝やまごを7時半過ぎに出発する。朝食の際やまごのおばさんに本日の行動予定として米子沢に入る予定を話すと、しばし席を外したおばさんが誰か地元の識者と連絡を取ったのか戻ってきて大丈夫ですよと答えてくれた。しかしこれは自己責任だ。
 気温は高めだ。やまごの玄関前でシールを貼って道路向いから米子沢橋に繋がる林道を登る。途中、一橋大ワンダーフォーゲルの山小屋を右に見て、米子沢橋でビーコンを着装し高度計を高度730mに合わせる。2週間前の会山行で低気圧が通過した際の大高山で、設定したままのカシオの高度表示では900mを示していた。8時25分橋を出発。
 井戸の壁を一時間で登り切ると薄日が射してきた。米子沢全体の眺望があり雪庇に注意しながら米子沢を覗くと大滝が雪に埋まっているのが見える。上流部にデブリがあるが、沢にはトレールの跡はない。大滝の左岸30m程上部に水平トラバース跡が望める(しかしこれは後に大滝上部に至りスキーヤーのトレールでなく、かもしかの足跡と判明する)。
 風もなく森林限界を越えたところでクトーを着けたが、雪面が気温上昇でゆるみ始めているのでニセ巻機への急斜面を難なく登り切ることが出来た。
 9合目のニセ巻機で休憩を取り終えたが既に1時を過ぎており、これから巻機山頂を踏むと米子沢をこなすには時間が足らなくなるので、雪面下3mに埋まっている避難小屋からお釜を過ごし直接米子沢に入ることにする。
 お釜のニセ巻機側は急斜面となっているのでトラバースは難しいが、お釜がほぼ雪に埋まっているので釜中央を抜けて米子沢源頭に立つ。井戸尾根を見上げると雪庇が発達しており、前日の好天で雪崩が数箇所にわたり崩れ落ち、デブリが沢の中央まで舌を張り出している。できるだけ左岸にルート取りを行うが、左岸の上部からも気温でゆるんだ表面雪が小さく転がり落ちている。雪質は重いが力と加重で曲がれる。
 デブリをいくつかやり過ごし大滝の上部に至る。井戸の壁の上から見えた左岸のトレールを偵察すると水平にトラバースしているカモシカの足跡であった。カモシカも大滝の雪崩を警戒しているのだろうか。大滝は週前半の大雪で完全に埋まっており段落差がなく滑れる状態と判断する。パーティの間隔をあけて順次大滝を滑走し、次の安全地帯に滑り込んだ。斜度が緩やかになるとあとは堰堤を数箇所、左岸を辿ることでうまく躱しながら米子沢橋まで心地よくスキーを走らせる。3時にやまごに戻れた。
 会山行として初めて米子沢を滑れた満足感からビール、中館さんお持たせのワイン、ウイスキーで祝福、夕食まで歓談した。9時就寝。

3月16日(日)快晴のちくもり、行動時間:9時間
 前日の満足感の余韻から、今日はヌクビ沢に挑むべく朝6時半の朝食を終えて雪面に立つ。今日は気温が昨日よりも低めだ。前日と同じペースで井戸尾根をニセ巻機まで詰める。 巻機山にはリフトのたぐいの機械類が全くなく、高度差1,000mを越える全く同じルートを連続2日も登ることはあまり他には聞かない。
 周囲の山並みは上越国境から谷川連峰、遠くは上越の各スキー場まで見通せる。
 昼食後くもり空となり風も出てきた。早速ヌクビ沢への取り掛かり口を見付けるべく避難小屋の裏側からシールを着けたままトラバース気味に進み、ヌクビ沢の源頭を覗く。沢底までの高度差が200m以上もあり、そこまでの小さな尾根筋には立木もなく30度の急斜面である。雪面は柔らかいがその下は氷結しているのがストックを刺すことで判る。滑落があると沢底まで止まらないだろう。ドロップポイントが難しい。
 ヌクビ沢に上越国境稜線から入るには一旦割引岳に向いその手前から廻り込むことになるがそれでは時間的に遅くなる。今回のヌクビ沢滑走は無理と判断し、安全を取り井戸尾根を引き返すこととした。
 避難小屋鞍部からニセ巻機に登り返していると、米子沢に滑り込んで行く2名のスキーヤーが見えた。ニセ巻機の頭でシールを外して2時半下山行動を開始し、ルート経験のあるゲストの石黒君を先頭に、重い悪雪で井戸の壁の降下も苦労しながら民宿やまごに4時15分に戻った。

民宿「やまご」について:
 清水集落の民宿を事前に調べたところ、雲天は2食で8,500円に深夜到着の半泊朝食付きで5千円、その他山田食堂など2食で6,500円。電話で各民宿の値段を問い合わせた際、近くの舞子スキー場の仮眠室が深夜12時から1,500円であることを伝えると、やまごは2食で6,300円に半泊朝食付きで2,000円にすると応じてくれたので即予約を入れた。やまごは日本山岳会会員で新ハイキングサービスチェーンになっている。
 15日の米子沢を終えて3時にやまごに戻り夕食までの間、喉の渇きを潤すべくビールを3本頼んだらサービスのお漬け物におでんを一皿盛り付けてくれた。その大根煮のうまいこと。夕食にはあゆの塩焼、まぐろの刺身、てんぷら、野菜のおしたし等などにサービスの熱燗が各自1本付く。
 山から降りてきたら帰りの着替えの場所とお茶を出しますよと言われたので、お言葉に甘え広間に上がり込んで、この日またもビール2本を頼んだら、こごみ・ウド・蕨・ぜんまいの山菜漬けが三皿付いてきた。山菜を残すのは失礼と思い、皿の上のものは全部頂いたが代金はビール1本500円の勘定であった。
 やまごは清潔でサービスよく、米子沢橋への林道入口にあり、お勧めです。