2005年GW 黒部五郎周辺 会山行報告

日程 : 2005年4月28日(木)〜5月3日(火)

参加者 : 土屋(L)、田中(記録)

4月28日(木)
上野発の夜行急行「能登」で富山へ向かう。自由席は8割程度埋まっている。熊谷駅で土屋さん合流。高崎駅、熊谷駅で下車する客多く、1人で2席を占拠することができ十分な睡眠をとる。

4月29日(金) 曇り時々雨
飛越トンネル手前4.2q 855……飛越トンネル1035〜1040……寺地山1350〜1355……北ノ俣岳避難小屋1445

朝6時、富山駅で下車。高山本線と神岡鉄道を乗り継ぎ、7:40に飛騨温泉口駅へ。駅からは京都からきた山スキーヤーと計3名、タクシーで飛越トンネルへ。予定ではトンネルまでタクシーでいけるはずであったが、除雪はされていない。8:40頃、和佐府の集落から少し入った個所(トンネル手前4.2Km)でタクシー下車(タクシー料金 10,400円)。仕方がないので、トンネルまで歩くことに。始めの2q は路面の雪がまばらな為、板を担いで、残りはシール歩行。更に悪いことに、雨も降り出して精神的に辛い。1時間40分のアルバイト。
飛越トンネルからは、トンネルの南側に取り付き、飛越新道、神岡新道を尾根伝いにシールで登る。雨は降ったり止んだり。視界もよくない。寺地山からの下りで稜線の細い部分があり緊張するが、後はひたすら歩くだけで、14:45に北ノ俣避難小屋に到着。先客は5名。我々の後に1名。当日の宿泊者は計8名で小屋の標準定員ちょうど。小屋で濡れたものを乾かし、土屋さん自慢の贅沢な夕食で体力をつけ、翌日に備える

4月30日(土) 晴れ
北ノ俣岳避難小屋615……北ノ俣岳845〜915――赤木沢の滝手前935〜950……黒部五郎岳1235〜1310――黒部五郎冬季小屋1035

4時頃起床。6:15に出発。天気は晴れ。斜面は凍っているので、クトーを装着して登る。標高2,450mからは斜度がきつくなり、私だけ歩行アイゼンに切り替え。8:35に北ノ俣の稜線に出る。薬師岳、雲ノ平、黒部五郎岳と見事な眺め。北ノ俣岳からは、稜線伝いのルートではなく、シールを外して赤木沢へ滑降する。登ってきた斜面とは違い、赤木沢への斜面は朝の日差しが当たり、表面の雪が溶けていて滑りやすい。
2,237mの滝の手前まで滑り、再度シールを装着して、黒部五郎岳へ標高差600mの登り返し。頂上手前の急斜面の登りは大変であったが、土屋さんのトレースのおかげで、なんとかシールで登り切る。 頂上で大休憩をした後、五郎カールへ。滑り出しの急斜面にビビッタが、何とか下る。斜面の雪は強烈な日差しで重くなっており快適ではない。後はトラバース気味に黒部五郎冬季小屋まで下る。小屋の宿泊者は計6名。


北ノ俣岳避難小屋から黒部五郎冬季小屋へのルート図

5月1日(日) 曇り後雨
黒部五郎冬季小屋600――五郎沢出会615〜625……雲ノ平山荘815〜815……祖父岳930〜950――五郎沢出会1030〜1045……黒部五郎冬季小屋1135

午後から天気が崩れるようなので、12時までには小屋へ戻れるように、早朝6時に出発。アイスバーンの五郎沢を下るのに苦労する。黒部川との出会でシールを装着。黒部川のスノーブリッジを渡り、祖母沢を登り始める。10分ほど歩くと、沢の口が大きく開いている個所が2箇所あり、高巻きで逃げる。その後は大きな口もなく、沢をひたすら詰めて、8時頃に雲ノ平の丘の上へ。祖母岳周辺から見る丘はスキー向けの急斜面ではないが、穏やかで私は好きである。平らな丘を東へ歩き祖父岳へ。祖父岳の山頂付近の西側は尾斜度が緩いが、雪がないため、北側をトラバース気味に登る。前日までの疲れか、大した登りでないはずだが、体はかなりキツイ。山頂手前で白い雷鳥がお出迎え、何とか頂上へ。
頂上からは360度の眺めが素晴らしく、ゆっくりしたいが、風が冷たいし、天気も下り気味なので、すぐに下降へ。土屋さんは斜度のある斜面を下るが、私は登ったルートを忠実に下る。祖父岳のカール上部で合流し、沢を下る。途中で飲料用に清水を汲み、五郎沢出会へ。祖父沢は祖母沢とは違って、まだ大きな口はなかった。
出会での休憩もそこそこ、再びシールを装着して五郎沢を詰め、小屋へ帰還。結局雨が降り出したのは、16時過ぎであった。本日の宿泊者、計10名。

5月2日(月) 雨後晴れ
黒部五郎冬季小屋1015……標高2,620m付近1100〜1110――五郎沢出会1150〜1215……黒部五郎冬季小屋1315 (田中単独)

黒部五郎冬季小屋1015――五郎沢出会1025〜1050……岩苔乗越1300〜1310……水晶稜線滑走開始地点1420〜1430―…雲ノ平1520〜1530――五郎沢出会1605〜1615……黒部五郎小屋1700(土屋単独)

天気予報通り、朝は小雨。風もあり、視界も非常に悪い。ただし天気は回復が予想されているので、小屋の宿泊者の全員が準備だけ整えて、様子をうかがう。10時前、天候が回復しそうな気配が見え、出発の最終準備。太陽が顔を出し、視界が一気に開けて、次々にスタートする。
当初は水晶岳まで行く予定であったが、昨日の疲れ具合と明日の行程を考えて、私は無理をしないことに。土屋さんは予定通り、水晶岳へスタート。


5月1日 田中のコース


一日中の休憩ももったいないので、一人で超ショートコースへ。小屋から標高300mほど上がり、黒部川沿いへ下る。出だしは私には適度な斜面で気持ちよいが、標高2,300m付近から木々が密になり、楽しく滑れないが、黒部川まで下る。ちなみに前日の雲ノ平で使ったスノーブリッジは見事に流されていた。
1時間かけて小屋まで昨日と同じ斜面を登り返して終了。明日の準備をしたり、長期宿泊の方といろいろ話したりして時間が過ぎる。17時過ぎ、土屋さん帰還。予定より早かったが無事に水晶岳から滑降ができたとのこと。夕食をとって、明日の早朝出発に備える。本日の宿泊者、20名弱。(田中)

午前中4時間以上も雨+霧。小屋で待機したため水晶へのツアーは最短(と考えられる)ルートを選択した。まずは五郎沢を黒部川出会まで滑走、シールを装着し岩苔乗越へ。
昨日まで、黒部川のスノーブリッジは祖父、祖母沢付近でも容易に見つけることが出来たが、今日は数個しかなかった。復路のためにスノーブリッジの場所をしっかりチェック。黒部川源流を辿るこの700mUPは気が遠くなるぐらい長い。特に単独行だと気の紛らわしようがない。岩苔乗越へつく頃に7、8人のパーティーが私を追いかけて登ってくるのを確認した。ワリモ岳から水晶岳の稜線をつぼ足で歩いていると、後続の7、8人のパーティーが岩苔乗越へ着いたようだ。


5月2日 土屋のコース

彼らの視線を何となく感じ続ける。水晶岳付近から東沢谷へ下降した人は多いかもしれないが岩苔小谷側に下降した人は少ないのではないか?などと考えながら、滑走開始地点に到着。滑走準備後、岩苔乗越に待機する7、8人のパーティーに雄叫びを揚げてみると、案の定、歓声が返ってきた。水晶頂上付近から一気に岩苔小谷に落込む一筋の白い絨毯はやはり彼らも注目していたのだろうか。ギャラリーがいるとヤル気と程好い緊張感が持ててよいものだ。急斜面をノンストップで滑走後、ギャラリーを見上げると、歓声とガッツポーズで迎えてくれた(様な気がした)。 
あとは雲の平へ上り返して、昨日と同じコースを辿るのみ。祖父沢途中の岩清水湧水地点で水汲みと、体の洗浄を済ませ、黒部五郎小屋へ向かった。(土屋)

5月3日(火) 晴れ
黒部五郎冬季小屋515……三俣蓮華岳710〜715……双六岳820〜845――大ノマ乗越下915〜925……大ノマ乗越1020〜1045――笠新道入口付近1205〜1210……新穂高温泉1240

帰りの交通機関を考慮すると、新穂高温泉13:40発のバスに乗りたい、温泉に入るのであれば13時には新穂高温泉着ということになり、逆算をして早朝5時の出発となる。
朝の強い日差しの中、クトーを装着して東斜面を登る。固い斜面であるが、昨日と同じ斜面なので、気が楽である。稜線はシール歩行、三俣山荘への分岐地点で一度夏道を歩くが、残りは再びシールで三俣蓮華岳へ。三俣蓮華から双六までは、稜線上に雪がかなり残っているので、アップダウンを全てシール歩行。
双六岳からは双六谷を滑走。私は双六岳からの緩斜面、土屋さんは双六南峰の急斜面からスタート。南東向きの斜面なので、この時間であれば雪が緩んでいて滑り易い。あっという間に大ノマ乗越下へ。標高差250mの急斜面を歩行アイゼンを使用。浅めのステップを使って50分かけて登る。きつい。
10:20に乗越へ到着。腹を満たしてから、下降準備。登山者、スキーヤーがぞろぞろ上がってきている。10:45に滑降開始。双六からの斜面と同じ感じであるが、小さいデブリや、登山者の歩行跡があり少し滑り難い。秩父沢付近からは大きなデブリを何箇所か越える。これが慣れないので、私はかなり体力を使う。左俣谷との出会の橋を通過した後も、まだデブリが何箇所かある。その度に板を外して登って、また滑ることの繰り返り。雪は笠新道の入口付近まであったので、そこまでは滑走可能。そこから残り約3Kmは板を担いで歩く。何とか12:40に新穂高バス停前に到着。私は無料の温泉に入って13:40の松本行きバスで帰京。土屋さんは、何と何と、翌日から再び立山を滑るために富山へ。


黒部五郎冬季小屋から大ノマ乗越


大ノマ乗越から小池新道

・ 初めての長期宿泊山行で、体力的にも精神的にいっぱいいっぱいで、土屋さんにお世話になりっぱなしだったが、非常に良い経験ができた。今回の山行を、来シーズンへ生かせるように、全ての面で向上を目指したい。(田中)

・ 数年前に旧会員の青木氏と辿ったコースだが、改めてこのコ−スの素晴らしさを確認できた。小屋泊山行はテント山行に比べ行動範囲が制約されるが、小屋の持つホノボノした雰囲気+快適性はそれはそれで良いものだと思います。数年後に同様のプランを計画しますので、希望される方は要チェック。(土屋)