2008年GW 北海道 会山行報告

ニペソツ山

5/2(金)6:50 テント場(杉ノ沢橋駐車場付近:標高960m)発、7:14 十六の沢コース登山口、11:17 天狗平(標高1888m:スキーをデポ)、13:15 ニペソツ岳頂上(標高2013m)、15:15 天狗平(スキー滑降準備)、16:55 標高1170m地点(スキー終了、担いで下山)、17:30 テント場(テントを撤収して幌加温泉に車で移動)

最初の計画では十勝岳から旭岳までのスキー縦走であった。ところが事前の情報で「北海道の山の状況は例年より半月から1ヶ月近く雪解けが早く、縦走路はかなりの部分スキーを担いで歩かねばならないようだ」との事で急遽コースを変更し、ニペソツ山から石狩岳をUの字に周回するコースになった。これなら当初の縦走に比べて距離が格段に短くなり日程に余裕が出来るので方々の温泉にも行けそうである。公共交通機関を使うと登山口まで行くのが面倒なのと温泉行脚に不便だという理由で旭川空港からレンタカーを借りる事になった。レンタカーの手配や車の運転など野村さんに完全にお世話になった。彼の事務能力はすごい。僕なら数時間かかるところを携帯電話を駆使してあっと言う間に複雑な交渉を処理してしまう。5月1日(木)の午前中参加者全員が旭川空港で集合し、その日の内にニペソツ山の登山口近くの杉ノ沢橋の駐車場に行きテントを張った。ここまでは殆ど雪がなかったが少し林道を行くと完全に雪で覆われている。テントの中で野村特製の豪勢なキムチ鍋を囲みながら皆で話し合った結果、「ニペソツ山と石狩岳の間の尾根には雪が無い可能性が大きいから明日は日帰りの装備だけ持ってニペソツ山の頂上を目指し、予想通り尾根に雪が無ければ石狩岳への縦走を断念して旭岳周辺の山に移動する。もし雪があって縦走出来そうであれば石狩岳への尾根の分岐点である前天狗岳辺りにスキーをデポして一旦このテント場に帰り翌日縦走できる装備を担いで登り直す」という事になった。


ニペソツ山

5月2日(金)は朝1時頃からパラパラと雨が降っていたが出発時には止んでくれた。登山口で倒木を使ってうまく十六の沢川を渡ると夏道が露出した急登の道になり、暫くして雪が出てきた。道幅が狭く急なのでスキーで登れずツボ足で歩くと膝までもぐるのでなかなかスピードが上がらない。その内傾斜が緩くなりスキーをつけて登れるようになった。天狗平の稜線に着くと先端が針のようにとがっているニペソツ山がパッと視界に入って来た。ここから頂上までの登路には殆ど雪がついていない事が分かったのでスキーをデポする事にする。石狩岳へ通じる尾根にも雪が少なく這松が露出しており、この時点で縦走を断念してしまった。両手にストックを持ってスピードを上げて登ろうとするが、道は小さな石がゴロゴロしており兼用靴ではなかなかはかどらない。やっと頂上に着くと360度全部が見晴らされ、本来なら我々が行くはずであった大雪山の尾根が真っ白に輝いて見える。来年こそはあのゆったりした尾根を滑りたいという思いが沸いてくる。ニペソツ山頂上直下の尾根は東側が非常に急峻な崖で、西側も45度以上の傾斜である。今回は幸か不幸か雪が無く夏道を行けたから何の不安も無かったが、これがベッタリと雪がついていたらかなり緊張するような場所であったろう。実際、この日の夜幌加温泉に行った時に壁に掛かっていたニペソツ山の厳冬期の写真は第一級の冬山の厳しさを見せていた。頂上からの下りは登りの時よりも足に負担がかかり、スキーをつけて今から滑って降りれる場所にたどり着いた時はホッとした。上部は快適に滑り、下部の樹林帯も少し雪が重くなったがたいした事はなく、スキーが下手な私でも2,3回転んだだけで楽しく滑る事が出来た。テント場についたらすぐテントを撤収して車で移動し、幌加温泉付近の空き地にテントを張って温泉に行った。この温泉は鄙びた温泉である。耳が少し遠いが親切なおばあさんがいて温泉大好き人間で我々がテントに引き上げた後もゆっくりと長風呂していたヴォルフ・大西夫妻には美味しいチーズをお土産にくれた。


ニペソツ山頂


ニペソツ山GPSルート図


黒岳・北鎭岳・旭岳周回

5/3(土) 11:30 層雲峡「大雪山黒岳ロープウェー」乗車(標高690m)、11:46「黒岳ペアリフト」乗車(標高1328m)、12:10 登山開始(標高1536m)、14:00黒岳頂上(標高1984m)、14:36 黒岳石室(テント設営:標高1888m)
5/4(日) 5:05 出発(スキーを担ぐ)、5:20白水川(シールとクトー装着)、6:55 北鎮岳頂上(標高2244m:滑降開始)、7:33 比布岳と安足間岳の間の標高1970m地点(シール装着)、9:03 安足間岳頂上(標高2194m)、9:50 旭岳の最低鞍部(中岳温泉付近:標高1750m:シール装着)、12:20 旭岳(標高2290m:北東に滑降開始)、13:00 標高2070m地点(シール装着)、14:14 間宮岳と荒井岳のコル(標高2185m)、14:48 赤石川(標高1907m:有毒温泉東北東:シール装着)、15:20 北鎮分岐方面の夏道出合い(スキーを担ぐ)、16:04 黒岳石室(テント場)、16:48 黒岳頂上、17:15 ゴンドラ山頂駅、17:45 層雲峡ゴンドラ駐車場、18:40 ゴンドラ駅付近(テント設営)

翌朝テントでゆっくりと朝食を取り、層雲峡に車で移動して11時頃ロープウェー駐車場に着いた。ロープウェー駐車場は満車状態で我々は乗り場からかなり離れた駐車場に駐車しなければならなかった。ロープウェー、リフトと乗り継ぎ、すぐシールをつけて歩き出した。最初は山を右に見ながらの傾斜の緩いトラバースであったが黒岳頂上直下は急傾斜をジグザグに登らねばならない。2時間ほど登ると黒岳頂上に着いた。これからのコースを見ると雪の白、這松の緑、地面の茶褐色がまだら模様となり、私のような洞察力とファイトが無い者には「とてもこれでは周回コースなんて無理、テントでタラフク食って寝て、明日は下山だな」と思った。ところがリーダーの村上さんはじっくりと景色を観察してスキーで周回できるコースをイメージし「大丈夫、行ける」と判断した。今日はまだ日が高いのでこのまま荷物を担いで行ける所まで行き、テントを張るか、あるいはすぐ近くの石室でテントを張り、明日軽い荷物でスピードを上げて周回するかの二者択一の選択となり、議論の結果今日は早めながら石室付近でテントを張る事となった。黒岳頂上から石室までは雪が全く無くスキーを担いで下った。テントを張ってまだ夕食には時間があったので村上・川久保を除いた元気な連中は足慣らしのスキーに行った。と思ったらすぐ帰って来た。雪がグサグサで急な斜面を直滑降で滑ってもなかなか滑らないので面白くなくて止めたとの事、帰りはシールを付けないで登って来たとの事。翌日は朝3時に起き朝食を済ませ、テントを撤収し、日帰り用の装備だけ担いで残りの装備は袋に入れテント場の這松に結びつけ出発した。これから一日かかって北鎮・安足間・旭と反時計回りに周回するのである。快晴で風が穏やかで絶好の山行日和である。最初スキーを担いで夏道を行き、すぐ道と分かれて白水川に滑り下りた。ここからシールを付け、凌雲岳を右に見ながらその裾野をトラバースして真西に向かい北鎮岳を目指した。雪が固くクトーが良く効く。


安足間岳への登り

2時間程かかって頂上に着いた。休んでいたらアイゼンを履いた5, 6人のグループが到着した。ここから待望のスキー滑降である。アイゼンの連中には如何にスキーが有効かを見せる為にも格好良く滑らねばならない。鋸岳へ行く尾根を滑った後南西に方向を変え比布岳と安足間岳の沢に向かって進んで行く。出来る限り有効にスキーで距離をかせげるようにコースを取っていく村上さんの方向感覚はすごいものである。あっと言う間に沢に着いてシールを付けた。左前方に安足間岳、右前方に比布岳が見え、安足間岳の頂上直下に5人パーティーが登っているのが見えた。二つの山の間のコルに登るコースが一番傾斜が楽に思えたので皆自分のペースで登り始めた。稜線に着くと北側には雪が無く、茶褐色の火山特有の色をした愛別岳が見えた。その頂上への夏道には5人パーティーが空身で登っている。安足間岳に着くと彼等のスキーが5個裏返しにして日向ぼっこをしていた。頂上から愛山渓方面を眺めると20人くらいの人が続々と登って来るのが見えた。今の時期にあんなに大勢のパーティーで来るのは三浦さんをリーダーとするランドネと北海道チームの合同パーティーかも知れないと期待し、彼等の到着を待つ事にする。しばらくすると彼等はスキーを履かずツボ足で登っている事が分かり三浦パーティーではない事が判明し、彼等の到着を待たず出かけようとした。ところが彼等の先頭グループは猛烈なペースで登って来てあれよあれよという間に到着してしまった。若い先生に率いられた高校生の集団であった。ここからスキーで滑り中岳温泉の近くまで一気に滑り降りた。雪が良く荷物が軽いせいか一回も転ばず気持ちよく滑る事が出来た。右方の這松の中には赤いテントが張られており、そこから中岳温泉方向に踏み跡が着いている。ここをベースにして周囲を滑りまくり、夜は露天風呂に入るというのは最高であろう。


中岳温泉付近から旭岳を望む

温泉大好き夫婦のヴォルフ・大西夫妻には温泉を我慢してもらってシールを付け先を急ぐ。旭岳に近づくにつれ傾斜が急になり、大きくジグザグに切りながら高度を稼いで行く。先頭の野村さん以下全員快調に進むが僕がシャリバテとなってしまい皆に頼んで休憩してもらう。大急ぎで食物を腹に詰め込んでいたら上から大集団が滑り下りて来た。何と先頭は三浦さんである。オーイと呼び止めお互いに奇遇を喜び合う。こんな広い自然の中でこんなにピッタリと会うとは何たる奇跡!しばらく話して彼等は我々が登って来た方向に滑って行きアッという間に豆粒のようになってしまった。僕は今腹に入れた食べ物と再会の喜びのお陰で元気が出てその後は皆のペースについて登れた。頂上には男女のカップルがいて凧を揚げていた。かなり風があるので凧は勢い良く揚がるが休んでいると寒くなって来る。当初の山行ルートであった白雲岳、忠別岳の間の白と緑のまだら模様の稜線を眺める。旭岳から北東にちょっと滑ってシールを付け間宮岳と荒井岳のコルに辿り着いた。ここでは雪が少なくしばらくスキーを担いで歩かねばならなかった。この辺りは御鉢平を取り巻く外輪山であり、下の御鉢には小川が姿を見せ、上流部には「有毒温泉」と恐ろしげな名の付いた場所で、ガスか水蒸気か分からぬが噴煙が上がっている。小川は外輪山の切れ込みを伝わって下流に流れ出ている。我々は有毒ガスを心配しながらその切れ込みを目指して滑って行った。この沢は黒岳石室のすぐ近くを流れているので当初の予定ではその沢に沿って滑って行く予定であったが遠目では雪に見えていた沢の白さは硫黄や白石の混じった無雪地帯であった。そこで方針を変え、シールを付けて黒岳と北鎮分岐に行く夏道まで登った。この夏道は雪解けでぬかるみになっており、スキーを担いでテント場を目指した。ここまで来ると体力の限界となり、歩くのが辛い。しかしロープウェーの終発時間に間に合うよう急がねばならぬ。よろめきながらやっとテント場に着いたのが16時過ぎ。多分終発時刻は17時頃だろうから間に合わぬだろうなとは思うが僕以外は全員諦めた様子が無くパッキングを急いでいるので僕も他の人の足を引っ張らぬ様、急いで這松に結びつけた荷物袋を取り出しリュックに入れ直す。ここから黒岳頂上まではスキーを担いで登り、頂上直下から滑り出した。全員で一緒に滑っていてはとてもロープウェーの終発に間に合いそうもないのでスキー技術と体力が抜群のヴォルフさんに先に行ってもらう。僕は殿の村上さんに見守られながら何とかリフト乗り場まで着き、スキーを担いでロープウェー乗り場まで急いで歩いて行くと従業員の方達が迎えに来ていた。16時45分が一般乗客用の最終便で17時が従業員の最終便であったのだが発車直前にヴォルフさんが駅に到着したので我々を待っていてくれたとの事。何と15分も待ってくれた。従業員の皆さんや休憩無しで頑張って飛ばしてくれたヴォルフさんや大西さんに感謝しながらロープウェーに乗り込んだ。この日はロープウェー駅の傍を流れている川の対岸にテントを張り、近くの温泉で暖まった後、レストランで食事をした。


三峰山(三浦パーティーに同行:参加者は安仁屋と川久保)

5/6(火) 8:55白銀荘を車に分乗して出発、9:06凌雲閣着(標高1320m:シールをつけ出発)、9:37スキーを担いで夏道急登、10:25三峰山沢(雌鹿ノ滝上部:標高1494m)、11:00 三峰山中腹(標高1649m: シールを外して滑降準備)、11:32三峰山沢沿いの林道(標高1105m: 蕗の薹採取、スキーを担ぐ)、12:10バーデン上富良野(標高1010m)、12:35白銀荘着

5月5日は9時頃出発して層雲峡を見物した後、方々で道草をして16時半に十勝の白銀荘に着いた。連休なのに幸いにも我々全員宿泊出来るとの事。外は雨の上、非常に強い風が吹いていたので家の中で寝る事が出来るのは有り難い。鈴木さんが幹事の「ランドネ&北海道合同パーティー」と歓談する。翌6日早朝、野村・ヴォルフ・大西の現役バリバリ組はレンタカーで旭川に帰って行った。村上さんは完全休養、安仁屋さんと僕は三浦チームに参加させてもらった。9人のメンバーが三浦さんと函館から来た久保田さんの2台の車に分乗して凌雲閣に行きそこからシールを付けて登りだした。最初富良野川に沿って緩やかに登り途中でスキーを担いでツボ足で急登し上ホロ分岐に行く夏道に着いた。ここから再びシールを付け、ほぼ夏道に沿って十勝岳と富良野岳の稜線を左上に見ながらトラバースして行った。今朝の天気予報では晴れになると言っていたのに殆ど曇り、時々小雪も舞い風が強い。三峰山の頂上直下は傾斜が急で雪がついていないが、ルンゼ上部の雪が残っている所まで登る予定であったが雪面が固くクトーを忘れて来た人もいたので途中で登山を止め滑り出す事になった。ガリガリの急傾斜なので這松の中に潜り込みシールを外した。あとは一気呵成に三峰山沢を滑ると山の麓は天気も良くなり、蕗の薹が一面に咲く土手に出てきた。皆で夕食用に美味そうな蕗の薹を集める。後はスキーを担いでバーデン上富良野に着き久保田さんに迎えに来てもらい白銀荘に帰った。

(感想)
今年は雪解けが早く十勝岳から旭岳という大縦走には行けなかったが、ニペソツ岳という本州の人なら滅多と行かない山に登れ、日帰りとは言いながら旭岳周辺を体力一杯に周回し、そして最後に白銀荘という優雅な温泉宿に宿泊し三浦パーティーの山行にも参加させて頂き、十分に楽しいスキーツアーであった。その上、前から行きたいと思っていた旭山動物園見物というおまけもあった。これらの楽しい山行が出来たのも全て素晴らしい山仲間があってこそだと思う。感謝、感謝である。

(川久保 記)