2009年1月 八甲田山(東京スキー協行事参加) 会山行報告

1月28日(水) 天候:晴れ (全日一般ガイドツアー参加:井上・川久保)

9:00 ツアー参加者用の大型バス酸ヶ湯温泉を出発--9:50 ロープウェー頂上駅で点呼の後田茂泡岳頂上・滑降開始--10:30 沢に滑り降りてシールをつける--12:20 大岳避難小屋--13:10 大岳頂上より約50m下で滑降開始--13:30 大岳と小岳の鞍部・再びシールをつける--14:19 小岳頂上より30m下で滑降開始--15:40 箒場に着き迎えのバスに乗る--16:23 酸ヶ湯温泉

ガイドツアーのバスは補助席も出るくらい満員の参加者である。素晴らしい天気!ロープウェー駅の頂上駅から岩木山なども遠望出来る。今日の参加者は25名との事。これを其田隊長とその息子さんがガイドし、それ以外にもビデオの撮影係りや手伝いの人など数名いた。スキーを担ぎツボ足の一列縦隊で田茂泡岳に向う時ビーコンチェックがあった。
頂上から緩い下りを滑り降り、赤倉岳との広いコルに出てそこからスキーをつけたまま緩く登り右手の沢を見下ろす所に出た。前日かなりの雪が降ったのか全くトレースが無く、踝までの雪を先頭の其田隊長がラッセルして行く。ここから沢に滑り込みシールを付けて登りだした。スピードはゆっくり、荷物は軽く、ラッセルとコースはガイド任せ、快晴無風でこんな気楽な山行はない。今まで春に2回、田茂泡岳から大岳に登っているが全て赤倉岳経由であり、このコースを行った事がなく、良い勉強になる。途中ラッセルを少しだけ息子さんと代わっただけで殆ど其田隊長がリードして大岳ヒュッテに着いた。ここでも快晴微風だから小屋の中より外で食べた方が良かろうと広い雪原で腰を下ろし昼食となる。
歩いていると暑くて下着とYシャツくらいで良かったが休んでいると寒くなりジャケットを着る。30分程休んで出発。大岳を左から回りこみながら次第に高度を上げて行く。頂上から約50m下で雪が固くなりクトーが欲しいと思える場所でシールを外しての滑降となった。大岳と小岳の鞍部まで滑り降り、そこから再びシールをつけて小岳に登った。しかしここも頂上直下で登山を終了し滑降となった。皆思い思いに深雪の中を滑る。踝までもぐるが斜面が急で雪が軽いので自由にクルクルと回る事が出来、少しスキーが上手くなったような気がして来た。滑り終わって後ろを振り返り、自分の付けたシュプールを眺める。そこから中級程度の斜面を滑った後、緩い林間コースとなり、先頭は下りのラッセルとなった。
隊長の息子さんや見習いガイドが先行してくれ、後続はその踏み跡を滑って行けるので楽である。程なく箒場に着いた。隊長のコースタイム通りなのか事前に携帯電話で連絡したのか(このエリアはどこでも通話範囲内との事)既に大型バスが待っており、1分の時間ロスもなく帰途についた。4月末頃からはこの車道にも公共バスの運行が開始されるがそれまでは「箒場」とか「銅像」とかの場所に下りてくると歩くかタクシーを頼まねばならない。そのタクシー代を払う事を考えれば1日3500円でガイドと送迎までしてくれるガイドツアーは安いものだと思う。有名な「千人風呂」はシャンプーが使えないので「玉の湯」という別の小さな風呂に入り、ビールを飲み、夕食後就寝。天国にいるような生活である。




1月29日(木) 天候:晴れ (全日一般ガイドツアー参加:井上・川久保、午後半日ガイドツアー参加:田原)

9:00 ツアー参加者用の大型バス発車--9:45 ロープウェー頂上駅で点呼の後田茂泡岳頂上・滑降開始--10:25 沢に滑り降りてシールをつける--11:32 大岳避難小屋--12:45 赤倉岳頂上より約20m下で滑降開始--14:20 箒場に着き迎えのバスに乗る--15:00 酸ヶ湯温泉

今日の昼から田原さんも合流する予定だが、今日も良い天気なので田原さんには悪いが我々は朝9時からの一日ガイドツアーに参加する事にする。今日の参加者は15人程。昨日と同じコースで大岳避難小屋に行く。昨日と違うところは既にトレースがついているのでラッセルする必要がなく昨日より1時間ほどスピードが速い。少し曇っていて風も出ているので今日は避難小屋の中で昼食となる。若いガイドと見習いガイドがドアの前に少し積もっていた雪をシャベルで掻き落とし中に入る。4畳半くらいの土間と3畳くらいの床が2層になっていてトイレもついている。ちょっとトイレの臭いがするが素晴らしい避難小屋である。
30分ほど休んでゴーグル、襟巻きなど完全な防風装備になって外に出る。昨日と違って風が強い。井戸岳を左に見ながらトラバース気味に斜上し、赤倉岳を目指す。風の通り道の斜面はアイスバーンになっているが少し行くと踝までもぐる新雪である。今日も赤倉岳頂上はすぐ近くなのに登らず、頂上直下でシールを外して滑降を開始した。かなり急な2段になった斜面で雪は軽く良く回り皆大満足。昨日の斜面より長いような気がする。尾根の上では風が強かったが沢では無風でゆっくりと休憩。その後疎らな樹林帯を滑って行くと昨日のトレースと会い、箒場に出て宿に戻った。私は一般ガイドツアーというものに初めて参加したが皆スキーが上手いのには驚いた。結構な歳で平凡な外見をしたオジサン、オバサンが急傾斜の深雪を苦も無く滑って行く。シールを付けた登りも遅れずについて来る。高齢者の山スキー人口はどんどん広がっているのであろう。昨日より1時間以上早く宿に着き、千人風呂にゆっくり浸かって部屋で酒を飲んでいると田原さんが午後の一般ガイドツアーから帰って来た。今日のコースは田茂泡岳から滑り出し、第二野営地に降りて来たとの事(八甲田温泉コース)。雪も良く楽しかったとの事。


1月30日(金) 天候:晴れ後曇後ホワイトアウト(全日貸し切りガイドツアー参加:井上・田原・川久保・荒木(三多摩))

9:00 ツアー参加者用の大型バス発車--9:35 ロープウェー頂上駅から田茂泡岳頂上・滑降開始--10:25 沢に滑り降りてシールをつける--11:40 大岳避難小屋(ガス)--12:30 トラバースして井戸岳方向に行き滑降開始(完全なホワイトアウト)--13:55 箒場に着き迎えのワゴンに乗る--14:30 酸ヶ湯温泉帰着

この八甲田のツアーは東京スキー協の主催で大川さんがリーダーである。しかし、残念ながら直前に風邪をひいて参加出来なくなり、結局「ランドネ」の井上・田原・川久保の3名と今朝から参加する「三多摩」の荒木さんの計4名となった。毎年1日だけは東京スキー協だけで其田隊長を貸し切りにする伝統との事で今日は貸し切りガイドツアーとなった。
2日間続いた好天も今日から崩れるとの天気予報だが、朝方は良い天気であった。一般ガイドツアーの参加者も結構いてロープウェー駅に向った。頂上駅で彼らと別れ、其田隊長を先頭に我々東京スキー協の4人と其田隊長の30年来の旧友で新潟から来られた下村さんが飛び入り参加。合計6人で出発する。大岳の頂上付近にはポッカリとレンズ雲がかかっている。昨日と同じコースを辿り避難小屋へ。しかし小屋に着く頃は打って変わってガスの中に入り視界が殆どなくなった。小屋の中でゆっくりと昼食。其田隊長の話では1月に3日連続でこの大岳避難小屋に来る事が出来たのは隊長が10年前にこの地に来て以来初めてとの事。視界が無く、風も強いのでここでシールを外す事になる。
昨日と同様に井戸岳を左に見ながら若干登り気味にトラバースして浅い沢をひとつ越えてから滑り始めた。雪の状態も傾斜も昨日と同じように思えるが視界が10m程とホワイトアウト状態なので、隊長に少し滑ってもらっては止まって全員がついて来る事を確認してもらう。隊長は地図も磁石も全く見ず、記憶と勘だけで滑って行く。皆ホワイトアウトのなか、少し船酔い状態となる。左の沢を越えて傾斜も緩く樹林帯に入って来たがまだ視界は良くない。隊長の話ではこんなに低い高度になってもガスが取れないのは滅多に無いとの事。
そのうち左からのトレースを発見、昨日の赤倉岳のツアートレースだった。見事なガイドである。箒場に着いたらワゴンが待っていてすぐ宿に帰り、お定まりの風呂と酒になった。風邪で今回の山行を見合わせていた大川さんも夕食前に我々の部屋にやって来て、今朝からゲレンデで滑っていたとの事。夕食後、皆で日本酒一本を手土産にガイド専用室に行く。其田隊長やガイドに混じって、ツアー参加の元気の良い女性達が談笑しながらスキーのビデオを見ていた。ツアーに同行したカメラマンによる未編集のツアービデオを上映してくれた。隊長の華麗なる滑りをはじめ、望遠や広角を駆使して見事に取れている。アングルも良くてまさにプロの腕である。時々脇役として私の姿もチョコチョコと出てくるが主役に比べて随分と見劣りがする。
続いて、昭和10年頃に三浦敬三さん達(営林局)が撮影した八甲田の山スキーの8mm映画(DVDに焼きなおしたもの)を上映してくれた。昔のエッジの無い長いスキーを使い、ボーゲンで自由自在に野山を滑りまくっている姿に感動する。このDVDは門外不出との事。残念ながら入手出来ないが、是非一度ガイド専用室で見ることをお勧めする。きっと先人の滑る姿に感動する事請け合いです。我々は飲みつかれもあり、1時間ほどで引き上げ、寝る。

1月31日(土) 天候:吹雪

停滞

今日は風が強くロープウェーが動かないのでガイドツアーは中止との事。週末で大勢の客が来ているが気の毒なことである。我々は良い休養日になり宿で沈殿することになった。大川・荒木両氏はリフトでスキー練習をするとの事。早朝井上さんの北海道のスキー仲間、久保田・梶田両氏が函館から到着。彼らもこの吹雪では滑る気がせず、夜行列車の疲れもあり宿で沈殿との事。夕食後我々の部屋に三多摩と函館グループも来て酒盛りが始まった。

2月1日(日) 天候:小吹雪後晴れ(午前のみの一般ツアー参加:井上・川久保・田原、午前・午後の一般ツアー参加:荒木・久保田・梶田)

9:00 酸ヶ湯温泉をツアーバス出発、9:40 ロープウェー頂上駅着・点呼の後、田茂泡岳頂上から滑降開始(変形モッコ沢コース)、11:30 ロープウェー麓駅帰着後昼食。12:40定期バスで酸ヶ湯温泉に戻る。

小吹雪だが風は弱くガイドツアーはあるとの事。但し一日ツアーはなく、午前と午後の半日ツアーがそれぞれあるとの事。ランドネ組は午前のツアーだけに申し込み、三多摩と函館組は午後も参加するようだ。週末であり、昨日のツアーが中止だったので参加者が非常に多く、大型バスは補助席まで出る繁盛である。人数が多いので2組に分かれ、我々の班は28名であった。
田茂泡岳頂上から赤倉岳への広いコルに行くまではこれまでと同じコースだが、そこから左に折れて谷に入る急な下りとなった。すぐ樹林帯となり、雪もやわらかく風もなくなった。沢を右から左に横切って少しまっすぐ降りた後、今度は左から右に横切りそのまま長いトラバースとなった。傾斜がかなり緩くなったところでゲレンデのコースに合流し、右上からスキー客がどんどん降りて来た。そのコースを滑って行くと程なくロープウェー乗り場に着き、午前の部の解散となった。函館組と荒木さんは午後のツアーにも参加する為、ロープウェー麓駅で別れる。ランドネ組はバスで酸ヶ湯温泉に戻り、温泉で汗を流した後井上車で青森港に行き、フェリーで函館に渡った。(川久保 記) [感想]
(井上)積雪は例年の半分以下に感じられたが、山にはそれなりの雪がありパウダーを楽しめた。また、ホワイトアウトでの滑降も良い経験となった。この時期に箒場岱コースを3日連続で実施できたのは珍しいとのこと。地球規模の気候変動の影響か、気象の変化が激しくなっている。来年は今年の欧州並の大雪を期待したい。
(田原)ホワイトアウトの怖さを改めて実感し良い経験になりました。パウダーと温泉と酒の3点セットの八甲田は素晴らしい!

八甲田のルート図 赤線:1月28日、緑線:1月29日、青線:1月30日


八甲田のルート図 紫線:2月1日