2010年2月 穂高山荘〜焼岳山荘〜上高地 縦走 山行報告

2月12日(金)

9:40 平湯からバス発〜11:30 新穂高ロープウェイ上駅発〜13:30 西穂高山荘

 当初の予定は予備日を含め2月11日から14日までだったが、11日の悪天予想を考慮して12日からの行動となった。11日午後東京を出発、有料道路の平湯出口すぐのところにテントを設営した夕食は鳥肉とタラの水炊き(川久保さん担当)で宴会。有料道路出口近くのせいか雪はたいして降ってないのに未明から除雪車の音が響いた。
 12日朝、鮭雑炊(野村さん担当)をいただき平湯からバスで新穂高温泉へ。ロープウェイ上駅の食堂で身支度を済ませてシールつきスキーで11:30出発。小雪が降るも風は弱い。幅が狭く上り下りのある登山道を行く。けっこう転んだ。13:30西穂高山荘着、今日の行動はここまでとなる。テン場の整地や風除けブロック積みに1時間ほど全員身体を動かし、なかなか良いキャンプサイトができた。この晩のメニューは納豆汁(山科担当)。


西穂高山荘のテント場


1日目のルート(緑線)、2日目前半のルート(紫線)


2月13日(土)

8:00 スキーをつけ焼岳方向に出発〜8:40 (テン場に戻りスキーをアイゼンに変えて)独標に向け出発〜10:00 独標直下〜11:00 テン場(大休止)12:00 テン場発〜16:30 割谷山〜17:00 テン場

 8:00いったんスキーをつけ焼岳方向に向かいかけたが、リーダーの総合的判断で今日は西穂独標往復の後、焼岳方向に進んで適地に幕営することになった。予備日がなくなった中で独標と焼岳到達の両方(特に後者)は困難であることがスタートしてハッキリしたためだ。いろいろな制約の中で達成を最大化する決定だと思った。
 テン場に戻ってアイゼンを装着、8:40独標に向け歩き出した。アイゼンはサクサクと効き、天候も眺めも良かった。10時に独標直下に至って、リーダーから登攀の意向を尋ねられたが、隊員の現在の登攀技術では独標登頂にはかなりの時間がかかりそうなのでここで引き返すことになった。視野を広く持てる下りは気持ちよかった。ゆっくり降りてテン場には11時着、またゆっくり休んで12時にスキーを履いて焼岳方向に向かった。途中、振り返ると穂高の峰々が白く輝いて美しかった。
 以後は概ね割谷山に向かう稜線を大きく離れないように南西に進む。一度やや北にそれたのでトラバースと稜線方向への登りで稜線近くに戻った。稜線の幅は狭く快適な進行とはいえない。割谷山のちょっと手前で急な登り斜面が現れた。ここでリーダーはスキーをザックに付けキックステップで先導した。このステップを頼りに全員急斜面を登った。リーダーがいなければ進めたかどうか。緊張した登りのすぐ先に割谷山山頂があった(16:30)が、変哲の無い小突起だった。さらに30分進んで、やや急な登りの手前の尾根上平坦地をテン場に整地した。けっこう長く行動したが天候に恵まれてよかった。
夕食はリゾット(大西夫妻担当)。


独標からの下り


割谷山付近


1日目のルート(緑線)、2日目後半のルート(紫線)


2月14日(日)

7:45テン場発〜9:55 焼岳小屋〜16:00 峠沢の底〜17:30 林道でスキーを脱ぐ〜 18:40 釜トンネル出口

 5時に起床し、外に置いた温度計を見ると零下17度だが好天である。朝食はうどん玉汁(木村(ゆ)さん担当)。7:45 テン場を出発し、すぐ目の前のやや急な登りから行動が始まった。 その後の尾根をたどる行程は滑りを楽しむ態のものではないが緊張感をもって山を踏破する楽しみがあった。
 次第に噴煙を伴う焼岳の姿が目の前に広がる。どこを登れば頂上に至るかと眺めるが、自分にはイメージするのが難しい。最後にガリガリの急斜面を長い斜滑降で降りて焼岳小屋に至った。
 焼岳小屋付近でゆっくり休んだ後、峠沢のゆるやかな斜面と広い空間に出たときには、あとは快適な滑走だ!と嬉しくなった。しかし、核心はそれから始まった。
 峠沢に向かってスキーで少し下ったところで、そのままでは崖が障害となり沢の底に降り立つことはできないことが分かった。そこでリーダー村上さんはロープを持って谷の左岸方向に偵察とルート作りに向かった。やがて、リーダーが戻り指示が出た。村上さんがフィックスしたロープによりまず急斜面のトラバース、そして途中からは懸垂下降をする。川久保さんを先頭に動いたが、全員が通過するには相当時間がかかった。
 懸垂下降でやや緩やかな大斜面に出るが、右下方の沢底まではまだまだ距離がある。大斜面のフォールラインをたどっても崖に阻まれそうだ。前方を眺めるとこの大斜面を斜滑降で下っていくと、突き当りで沢底につながる斜面に至りそうに見えた。自分が降りてまだ後続のフィックスロープでの下降が続いており、進路を探すよう指示が出たのでその方向に滑り出した。斜滑降の途中、右手谷側には適当な降り口が見当たらない。進んでいくと進行方向に谷底に至りそうな斜面が現れたがその手前には下りの段差がある。段差を避けるには急な斜面を下ることになる。そこで私が行き詰っているとアイゼンで降りてきた野村さんが追いつき、そのままクライムダウンで急斜面を降りていった。それからリーダーが他のメンバーを伴って到着し懸垂下降をセットした。
 こうして4,5時間をかけて焼岳小屋から峠沢の底に降りた。谷底でクラストした雪面の踏み抜きにより川久保さんが膝を痛めたが最後まで独力で行動された。一日も早く快癒していただきたい。
 釜トンネルを抜けた時には、野村さんの交渉力を以ってしても時間的にタクシーを調達することが叶わず、どうなるかと心配されたが、大西ヴさんがヒッチハイクを試み一発で成功!車を止めたらドイツ人からきれいな日本語で話しかけられ、ドライバーは驚いたことでしょう。おかげさまで月曜に突発休暇とならずに済んだ。
 今回の山スキー山行では、新雪の大斜面にシュプールを刻むといった楽しみには乏しいが、一定のポイントを押さえながら山域を移動する山スキーの旅感覚、アドリブ感、緊張感などを満喫することができた。それも好天で西穂独標や穂高の峰々、噴煙の焼岳の眺めを楽しみながら。
 節々で判断と先導と確保をしていただいたリーダー村上さんに感謝します。

  (負傷者 川久保の反省)
 峠沢底部への野村さんのクライムダウンを辿ってようやく急斜面が終わり、もう少し先でスキーを付けようとして歩き出したとたん雪を踏み抜いて左膝までスッポリと埋没し、勢いあまって前に転んでしまいました。左膝の内側靱帯を痛めたようでしたが幸いにもたいした痛みはなく何とか上高地まで滑り、その後は除雪された道をスキーを背負って釜トンネルの出口まで歩きました。
次第に歩くスピードも落ちてきましたが、大西さんと由佳里さんという二人の美女の優しいエスコートに励まされて何とか歩き通す事が出来ました。この文を書いている現在、事故からもう1.5ヶ月以上経っていますが、未だビッコをひき、登山どころか階段の上り下りにも不自由しています。緊張する行動から解放された直後に怪我をしやすいようですので、皆さん方も私のミスを参考にして安全な楽しい登山をして下さい。


焼岳遠望


峠沢への懸垂下降


3日目のルート