2010年6月 富士山・御殿場口登山 山行報告

当初、5月中にスキーを担いで行きたかったが、日程や天候の都合で行けなかった。しかし、雪のあるうちに富士山に登りたいと思い、改めて遠藤州さんに声をかけたら、丁度彼も行こうと思っていたとのことで、実現した。同行した遠藤州さんは、ゲストとしてランドネとのつきあいがあるが、村上さんを通じて始まった。最初は、私がランドネの入会前に参加した2006年の5月の連休で、村上さんのガイドで室堂から槍の日本オートルートを6人で行った時である。その後、やはり村上さんがリーダーの時、2008年3月に妙高の杉野沢から高谷の池を経て火打山、焼山、金山を経由して小谷温泉まで一緒に行っている。
今年5月の長坂さん、阿部さんの計画の時は、どうしても京都に行かなければならない用事があり、残念ながら断念せざるを得なかった。それで次の週、誰か誘って個人的に行こうとしたが実現しなかった。
富士山にぜひスキーで行きたいと思いだしたのは、昨年5月の連休である。この時吉田口から登ったが、天気が良く下りは皆で適当に歩いたり尻制動で滑ったりしていたら、気がついたときは8合目から須走口の方へ降りていた。広大な斜面になったので気が着いたわけだ。長いトラバ-スをして吉田口の登山道に戻ったが、その時、須走の広大な斜面を見て、これはスキーで滑らない手はない、と思った。北海道の大雪山や十勝連峰の斜面も大きいと思ったが、富士山はやはり桁違いに大きい。それで、昨年は5月最後の週に行こうと昔の仲間を誘ったが、彼はその前の週に奥秩父に行き、そこから見た富士山には雪がなかった、ということで断念した。これが、今年はぜひ富士山で滑りたいと思った経緯である。しかし、上記のような状況で叶わなかった。例年6月は雪が少ないし、今年は特に少ないので、滑れてもかなり上部だけだろうということで、さすがスキーを担いで行く気はしなかった。それで純粋の山登りに切り替えた。
どうせ登るなら、最長の御殿場口から登ろうということになった。1440mの駐車場から3740mのお鉢の縁まで約2300mの登りで、標準的に1日で登るコースとしては日本で最大ではないだろうか。他に起伏の大きい登りとしては、甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根の2300m、剣岳の早月尾根の1240mなどがあるが、いずれも水平距離があるので途中で一泊する。

6月12日(土) 天候:曇りのち晴れ

出発7:30−5合目(2590m)11:30−昼食(2650m、11:48〜12:15)−7合5勺(3100m、13:55) − アイゼン着用(3170m、14:15)−8合目小屋跡(3410m、15:30)−御殿場口頂上銀名水(3740m、17:30)

 前夜は12時10分頃に御殿場口の駐車場に来て、一杯やった後、1時40分頃寝た。車が1台止まっていた。12時半頃、雨がぱらぱらと降ってきたが、まもなく止んだ。明け方4時頃?から上がってくる車の音がうるさかった。結構早く来るのだなあ、と言いながら6時に起床。駐車場の回りを歩いている人が見える。最初、朝早く来た登山者かと思ったが、雰囲気がなんとなく違う。曇りでガスが飛び交っていて2500m以上は見えない。今日は頂上泊まりなのでゆっくり、7時半過ぎに出発。登るに従い、トレーナー姿で小走りに斜面を走っている人、あるいは歩いている人達に出合うようになり、事情が分かった。登山者ではなく、散策者やトレイル・ランナーである。吉田口や富士宮口と異なり、ここは砂地なのでトレーニングに向いている。
われわれは雪山装備とテントを担いでいるので、ズルズル滑る砂地は歩きにくい。下を見て硬そうなところを選びながらもくもくと歩く他はない。結局、この日の登山者はわれわれ2人だけだった。途中、山小屋が全て壊れている、あるいは解体されているのが印象に残った。小屋がなかったら一般登山者はどうするのだろうか、などとくだらない?話をしながら登る。2000m付近でガスとなるが、上は晴れている。10時半ごろにガスが切れ 雪の斜面と頂上が見えた。その後、3000mぐらいまでガスの中へ入ったり出たりであった。
雪は7合目ぐらい(2900m)から出てきた。初めのうちは雪を避けて歩いたが、3150m付近で雪の上に載った。ここから先は7月の山開きに間に合わせるため、パワーシャベルとブルドーザーが組となって夏道沿いに急ピッチで除雪作業をしていた。 8合5勺付近で雪融け水が露出した岩の間から流れ出ていたので、汲んだ。頂上で雪を融かす手間ひまと燃料が節約できる。味もいい。ツボ足の足跡がこの辺から出てきたが、時折ツルリと滑るので、アイゼンをつけた。3400mを越え、午後になると、日だまりは暖かいが、日陰に入るとさすが冷やっとする。服装調節が難しい。薄手の手袋では指先が冷たくなってかじかんだ。5時30分ごろにお鉢の御殿場口(銀明水)に到着。お鉢の方へ行くと北風が結構強く冷たい。テントを鳥居の側の小屋の陰に張る。北風が来ないので快適であるが、南から吹いたらまともに食らうので、張り綱をしっかりと張る。誰もいない。さすがにこの荷物でこれだけ登ると、足首、ふくらはぎ、腿などに来て、どこかが痙りそうになったが、幸いならなかった。


6月13日(日) 天候:晴れ

起床4時半−出発6時−6合目小屋跡(2850m、7:45)−2合8勺(2100m、8:20〜8:35)−駐車場(9:17)

 幸い風もなく、着込んで寝たので暖かかった。雪の剣が峰やお鉢回りは2人ともしたことがあるのでカット。6時過ぎにすぐ下山に移った。雪は硬くアイゼンが快調に効く。せっかくアイゼンをはいているのだから、ということで夏道沿いにジグザグに降りずにまっすぐ降りたが、腿に来る。6合目の小屋跡には、登りには気がつかなかったがゴミが散乱していた。ここでアイゼンを脱ぐ(8時前)。5合目ぐらいで最初のトレイル・ランナーに出合う。今日も、かなりの数のランナーがいる。太陽の下で気持ちが良いので、2合8勺の小屋跡で最後の休憩を取る。
1500m以下はガスとなり、たくさんのトレイル・ランナーとすれ違いながら下る。駐車場着9時17分。駐車場周辺の植林現場がなにかむなしい。大きな駐車場その他の施設を作り、山をさんざん荒らした後の、ささやかな努力の象徴か。富士山のれっきとした登山路で、登りも下りも登山者に全く会わなかったというのは珍しいかもしれない。御殿場口ならでは、であろうか。帰りに御胎内温泉に寄り、筋肉をほぐす。達成感に満ちた満足のいく山行であった。次の日、久しぶりに腿が痛くなり、階段を手すりにすがって下りなければならなかった。

(安仁屋 記)