2011年3月 十勝岳周辺(全国スキー協オフピステ滑降) 山行報告

 全国スキー協山スキー部の主催でニセコ・チセヌプリ周辺滑降が1月に行われたが、北海道2本立て企画として十勝岳周辺オフピステ滑降が十勝岳温泉・凌雲閣をベースにして3月4日〜7日に行われた。  それに先立って、有志が白銀荘をベースにしてパウダー滑降を満喫。毎日の降雪で荒らされた雪面のトレースがリセットされて、全日程とも新雪粉雪深雪に恵まれ期待した通りのパウダー天国だった。

3月1日(火) 天候:曇り時々晴 入山

 初めての十勝岳方面、井上さんお奨めの航空券(当日シニア65)と森さんから教わった経路で旭川空港・上富良野駅前・吹上温泉白銀荘へと入る。上富良野駅前で吹上温泉行きのバス停を尋ねると、「ほら、あそこにラベンダー色に塗られたバス停の看板が見えるでしょ」と言われて困る。「すいません、ラベンダー色とはどういう色ですか?」 やれやれ、こいつは手に負えねーと内心は思った事だろうが、私をバス停まで連れて行って下さる。 上富良野は日本のラベンダー発祥の地とか。  バスには年配の数人が同乗して、吹上温泉の露天風呂を話題にしている。あとで小野田さんから、白銀荘の一段下にある浴槽のみの無人温泉で近年その温度が上がって熱過ぎる程とか。しばらく十勝岳が噴火していないから、地下のパワーが上昇中だ。


3月2日(水) 天候:曇り時々晴れ 三段山

白銀荘9:05−三段山11:30〜45−白銀荘12:11

 風邪のため休養の三浦さんを白銀荘に残して三段山を往復する。 これまで話を聞くだけだった定評の十勝岳周辺に踏み込めるとあって気合が入る。 まず樹林帯の緩やかな切り開きを登る。森さん先導で1段目の登りから右に振って大きく回りこむようにして2段目に出る。夏道の尾根に乗ると樹林帯を脱して三段山北面の緩斜面から山頂稜線が見渡せる。上空の雲は取れないが青空ものぞき、まずまずの天候。緩い沢状の斜面を直登して三段山西肩から山頂に到着。山頂付近のクラストも今年はほとんど無く、クトーは不要。
 初めての十勝岳エリアで初日に一発で山頂を踏めるとは嬉しい。山頂をクリアーすると根っからの山屋は(内緒の話ですが)後の滑りはオマケで、上手な皆さんの後ろに続く。2段目の上部から少し西へ振って浅い沢の樹林帯を滑る。素晴らしいパウダーだが深雪すぎて傾斜が緩いと止まりそう。勝手知ったる皆さんは地図を見ることも無い。どんどん滑って行くと、ぽっかり切開きで白銀荘の上に出る。


三段山


3月3日(木) 天候:曇り時雪 前十勝岳

白銀荘9:00−標高1680m(滑走開始地点)1204−標高1270m(千春沢上滑走開始地点)12:57−白銀荘13:22

 にんにく・生姜など特製ドリンクの効果で三浦さんが戦列復帰。白銀荘から東へ夏道切開きで山腹を横断する。富良野川を渡って右岸を登り、更に千春沢も渡って右岸を登るが、雪崩の危険があるためシュナイダーコースを登らず大きく左(北東)側から回り込んで大正火口のボウル底に入る。朝は好天で期待されたが、西から黒雲が来て濃霧に包まれる。正面上部は大正火口の火口壁になる。目標の前十勝岳へ登る強行策は止めて下る事にする。
 大正噴火(1926/5/24)ではグラウンド火口丘の西半分が大崩壊し、残雪が融かされて多量の泥流が富良野川を時速60kmで流下して、25分後に上富良野市街を飲んだ、という解説板が白銀荘前の駐車場にあった。その泥流スロープ、滑ると雪に隠れた溶岩を踏む恐れがあり、三浦さんが先に滑って「地雷」を踏まないコースを指示してくれたお蔭でセーフ。ほぼ登ったコースを滑り、最後に千春沢右岸尾根を一気に滑って往路のトレースで白銀荘へ戻る。

前十勝岳

3月4日(金) 天候:曇り時々雪 千春沢

白銀荘9:05−1425m滑降地点10:51〜11:06−白銀荘11:27

 昨日と同様に白銀荘から夏道切開きで東へ山腹を横断する。富良野川を渡って右岸の千春沢左岸尾根を登る。地形的に見通しの良い尾根で、今日も山の上部は霧だが、右手に三段山への登路が見える。2段目の上部には公募ガイドツアーらしい大人数が登っている。千春沢源頭の方へ少し振って登りを終える。
 少し標高を下げると山麓の上富良野方面が見える。山麓は晴れているようだ。ほぼ往路のトレースで白銀荘へ戻ると小野田さんが到着している。午後、小野田さんが三段山の途中まで登って滑るというので同行する。2段目まで登って一昨日の様に登ったコースより少し西側の樹林帯を滑る。これで前座の白銀荘ベースを終えて、本題の凌雲閣ベースへ移動する。

3月5日(土) 天候:曇り時々雪 三段山

白銀荘9:00−1段目下9:35−標高1507m(夏道からずれ地点)10:53−標高1565m(引き返し地点)11:11−標高1407m(1回目滑走開始地点)11:51−標高1319m(終了地点)11:54−標高1495m(2回目滑走開始地点)12:45−白銀荘13:43

 北海道の矢野さん和田さん渡辺さん久保田さんが加わって、スキー協イベントに入る。冬型気圧配置は強くないが今日も似たような天候で雪が降り続き、山の霧が晴れない。慎重にコースが選ばれて三段山へ向かう。2段目で樹林帯を抜けて大斜面に入るが三段山の上半部は霧で見えない。先発していたパーティーが退却して降りて来るが、我々は交代でラッセルして登り続ける。濃霧で現在地をつかめず、足元の自分の板の上下具合で傾斜を知る。
 そのうち左が谷の急斜面となり、固い雪面上の僅か10cm程の新雪層は踏むと切れて落ちる。止まってGPSを見ると標高1565m、夏道から東方へ水平距離300m地点へコースアウトしている。シールを張ったまま往路を下り、1407mから西方向へ1319mまで1回目の滑走。シールを張って1495mまで登り返す。2回目の滑走は3月2日とほぼ同じコースで白銀荘へ下る。この日もパウダーで申し分ない雪質だが深すぎるとの贅沢な声も。

3月6日(日) 天候:曇り時々晴 上富良野岳西北西 派生尾根

凌雲閣8:57−標高1588m(最高到達点)10:38−標高1310m(1回目滑走終了地点)11:06−標高1433m(2回目滑走開始地点)11:35−凌雲閣12:18

 折角、凌雲閣をベースにしたので、ここが起点のコースへ行く事にする。凌雲閣の前の道路終点から急降下してヌツカクシ富良野川をまたいで渡る。対岸でスキーを履き凌雲閣をすぐ背後にして上富良野岳の派生尾根を急登する。夏は這松帯らしい派生尾根は好展望で、上ホロカメットク山・上富良野岳・三峰山の稜線が良く見える。青空から陽射しもあって好天を期待したが今日も霧が降りて来る。メンバーの写真撮影をして標高1588mから標高1310mまで1回目を滑る。標高1433mまで登り返して2回目を滑り、今朝登った尾根コース左(西)の浅い谷から取付きへ滑り降りる。往路と同じ地点でヌツカクシ富良野川をまたいで渡り、道路終点へ急登して凌雲閣に戻る。
 行動食で軽い昼食後、時間があるので一人で安政火口を見に行く。ヌツカクシ富良野川右岸の夏道に沿って登ると、残念ながら霧で何も見えなくなる。夏道が左岸に渡る辺りで右岸は急斜面になり、防災監視カメラがある。ミルクの中を歩くみたいで地形が見えないので凌雲閣へ戻る。女将の話では無理して行かなくて良かった。昔の安政火口は平坦地にヌツカクシ富良野川の源流が細く浅く流れ、浴衣に下駄履きの客が天然の浴槽に入りに行ったが、今は温泉の湧出が消え、夏の大雨で川がV字型に深く掘られているとか。見通しの良い時に再訪しよう。


上富良野岳西北西尾根にて


上富良野岳西北西尾根にて

3月7日(月) 天候:曇り時々晴れ 三段山

凌雲閣8:50−白銀荘9:00−三段山11:30〜45−白銀荘12:15

 最終日は好天に恵まれ、三段山に登って西の沢を滑る。この日の雪は格別で、更に太陽が出て雪面は見易く滑り易い。初の十勝岳周辺は十分に満足できた1週間。細身の山板だったら深雪に潜って苦戦したかも知れないが、セミファットの板に助けられた。山頂を踏めたのは三段山の2回だったが、素晴らしい雪のお蔭で滑りは最高だった。十勝岳周辺は聞きしに勝る好エリア、また訪れたい。

(直井 記)