2014年4月 尾瀬景鶴山 山行報告

4月11日(金)

野村車で尾瀬戸倉スキー場の駐車場に向かい 23時30分頃到着。広々とした駐車場に雪は無く 駐車している車も無い。どうもスキー場の営業は終了しているようだ。気温は0度でかなり低いがテントを張り、軽く宴会して就寝。

4月12日(土) 天候:晴れ

7:17 戸倉ゲート --- 9:20 津奈木橋 --- 11:23 鳩待峠 --- 12:30 山の鼻 --- 15:10 外田代(テント泊)

5時半頃起床し、朝食を食べて出発の準備。昨晩 車の背後のドアを閉めた時に、ザックのウェストベルトのプラスチックの部分をドアに はさんで壊してしまったが野村さんがスペアを持っており事なきを得る。
支度をして林道のゲート近くに車を移動すると、他に2パーティーが支度をしていた。皆 林道用にマウンテンバイクを持参していた。
ここから津奈木橋まで 約2時間は板をかついでの林道歩きだ。かなり腕が痺れ、肩も痛くなった頃津奈木橋に到着した。途中数箇所 流れている雪解け水が凍っている所があったが問題無く通過できた。津奈木橋からシール登高に切り替え、ほぼ沢沿いに忠実に登って鳩待峠に到着。天気は良いが北風が強くてかなり寒い。ここからシールを外して滑るが 一度高度を落とした後は ほとんど水平移動で山の鼻まで意外と長かった。山の鼻からの尾瀬ヶ原はたっぷり雪があり、この先の行程に問題はなさそうで安心する。(尾瀬ヶ原の雪が少なくてシールで歩くのに支障がありそうな場合は、ヨッピ橋経由で景鶴山に行く事を想定していた) 左手に至仏山、右手に燧ケ岳を見ながら尾瀬ヶ原を横断するが、水平移動が続き、重荷が肩に堪える。途中 真新しい熊の足跡を横切り、熊のテリトリーに入っていく事を認識する。猫又川を超えて右手に尾根を見ながら進み、猫又川の右俣に入ってすぐの所で外田代方面に向かって登り出す。ここで沢の上部からのシュプールを見つけて、こんな奥深い所まで来る山スキーヤーが他にもいる事に驚いた。
標高差で200m程登ると、開けた地形の外田代に到着し、風の弱そうな所テントを張る。ずっと吹き続けていた北風が テントを張る頃にようやく収まってラッキーだった。
ここまで来て、ようやく相似峰のような景鶴山のピークが見えた。なかなか格好は良いが上部は岩峰で、本当に山頂に行けるのかどうか少し不安になった。景鶴山の最高点は相似峰の東側のピークだが、西側のピークからは大きく切れ落ちているように見えたので、北側の樹林帯を大きく巻いて東側の尾根から登る事にする。
夕食は野村さんの美味しいタイカレー、夜は一時満点の星空だったが、その後 曇ってしまった。
計画当初は外田代からカッパ山、景鶴山、大白沢山を経由して外田代に戻る周遊コースを考えていたが、戸倉まで戻る長い道のりを考えて、景鶴山ピストンに変更する事にした。
高度差はたいした事は無いが、なにしろ水平移動が長くて疲れた一日だった。


テント場から見た 景鶴山(右側が最高地点の東側ピーク)


GPSトラック図 鳩待峠手前からテント場まで(戸倉から鳩待峠手前までは省略)


4月13日(日) 天候:

7:12 テント場 --- 7:55 カッパ山 --- 8:45 1890mのコル --- 10:05 景鶴山 山頂 --- 11:05 1890mのコル --- 12:55 カッパ山 --- 12:50 テント場 --- 14:05 1735mのピーク --- 15:15 山の鼻 --- 17:03 鳩待峠 --- 17:55 津奈木橋 --- 20:00 戸倉

5時半に起床し、ラーメンの朝食を取って出発。良い天気だが放射冷却で明け方は結構冷えた。歩き出してすぐにテントのすぐ近くを横切って尾瀬ヶ原に向かう熊の足跡を発見。昨日は無かったので、昨晩から朝にかけての足跡だろう。足跡の大きさから昨日尾瀬ヶ原で見た熊の足跡と同じ熊の固体の物だと思われる。一応テントを避けて歩いているように見えたので少し安心したが、テント内に食料が無い事を確認し、ゴミを外に出して、近くの木の根元に埋めた。


テント場近くの熊の足跡

カッパ山へはほんの一登りだが雪面は硬く慎重に登る。カッパ山からシールをつけたまま少し下り、景鶴山の西側の1890mのコルに登り返す。ここからは遠く平ヶ岳が望める。景鶴山の北側の樹林帯に入り、なるべく高度を落とさないようにトラバースしたが これは裏目に出た。北側の最も斜度が急な斜面に入り込んでしまい、表面に雪が乗っているもののその下はカチカチの急斜面だった。上林はクトーも着けず強引に突破したが、野村さんはクトーを着けて通過した。これが正解だろう。
思ったより長かったがようやく東側の尾根に出てシールで登ろうとしたが、斜度はそれ程きつくないのだが狭いナイフリッジ状になっており、シールでの登高は不可能。板をデポしてナイフリッジをまたいでキックステップで慎重に登り出す。歩行アイゼンを持って来なかった事を非常に後悔したが、幸い東側で日当たりが良いため雪が緩んでおり、慎重に登れば危険は少ないと判断した。テン場からも見えた大きな岩に着いてからは尾根上と尾根の北側の潅木帯との間を慎重にルートを選びながら進んだ。緊張したが アルパインちっくで面白かった。この時期 普通はアイゼン+ピッケルの世界だろう。最後 這い蹲るようにして景鶴山の山頂に到着。風もなく360度の素晴らしい展望が待っていて感動した。真下には景鶴山が大きく伸びており、スキーで滑走するのにも素晴らしい斜面のように見える。その先には真っ白な尾瀬ヶ原が左右に広がっており、燧ケ岳も間近に見える。戸倉までの下山を考えると長い行程なので、長居はできず、写真を取りまくって元のルートを戻る。急な下りはクライムダウンし、ナイフリッジは四つんばいになって後ろ向きに下りて、板をデポした地点まで戻って一安心。


景鶴山 山頂付近の稜線を行く野村さん

カッパ山とのコルまで戻って、あとはカッパ山の西側を巻いて外田代に出ればテント場に戻れるはずだったが、目標物の無い樹林帯の中で大きく方向を間違え、カッパ山の北東側の沢の対岸に出てしまった。少し戻ってカッパ山に登り返してテント場に戻る事にするが、野村さんが少し遅れ気味なので、カッパ山山頂からは上林が先行してテント場に戻ってテントの撤収を行う事にする。山頂からは朝の自分たちのトレースをたどれば簡単に戻れると思っていたが、クラスとした斜面にトレースがほとんど残っておらず、少し北側に出てしまい また現在位置が判らなくなってしまった。(視界の無い樹林帯の円錐形の山で方向を間違えずに下るのは本当に難しい) ここで熊の足跡を見つけ、これをたどればテント場に戻れると確信してたどった所、みごとテント場に戻れた。尾瀬の熊さんに感謝!
テントを撤収し終えた頃 野村さんと合流できてパッキングして出発の準備。昨日歩いたコースは水平移動が多くて疲れるため、帰りのルートを変更し、外田代から南側の尾根を登り、尾瀬ヶ原に滑る込む事にする。ゆるい尾根を登り1735mのピークを東側に巻いて、尾瀬ヶ原に向かって南西斜面を滑る。ここは広々とした適度の斜度のブナ林の疎林で、今回唯一素晴らしい滑走が楽しめた。尾瀬ヶ原に下った所で昨日の自分たちのトレースに合流して山の鼻に戻った時には既に15時を過ぎていた。予定の時間を大幅に過ぎているが ここまで来れば何とか帰れるだろう。


1735mのピークの手前

うんざりするほど長い だらだらの水平移動の後 一登りで鳩待峠に到着。シールを剥がして津奈木橋まで滑走したが既に夕方になって気温が下がり、雪面はクラストしてギタギタになり、くたくたになった体と足に堪えた。津奈木橋からは最後の力を振り絞って2時間の林道歩き。後半は足も肩も腕も痛くて10分おきに休憩を入れた。途中で日が暮れて、ヘッドランプを点け、戸倉の林道のゲートに着いた時には20時を過ぎ、体もふらふらになっていた。久々の13時間行動となった。

核心部の景鶴山への登りはスリリングで面白かったし、天候にも恵まれたが なにしろアプローチが長くて大変だった。次回 同じ時期に尾瀬に来る場合は、自転車が必須と痛感した。

(上林 記)


GPSトラック図 テント場から山の鼻まで