2014年GW 鳥海山 文殊岳&新山北面 山行報告

4月26日(土) 天候:快晴

道の駅鳥海7:00=7:40ブルーライン車止め7:50=8:07大平駐車場(1070m )8:35〜10:35御浜小屋(1708m)10:55〜12:25文殊岳(2001m)12:45〜13:10登り返し(1523m)13:17〜14:35大平駐車場(1080m)15:00〜15:30鶴泉荘



GPSトラック(大平〜文殊岳):登り=赤色、下り=青色

前日道の駅鳥海に到着したのが午前3時。GWともなるとあっと言う間に朝を迎える。先週の月山も見事な桜だったが、この付近も満開だ。朝食を簡単に済ませて鳥海ブルーラインのゲートに向かう。8時の開門だったが、若干早く7時50分に通してくれた。車で高度を上げて行くにつれてとてつもない雪壁を縫うようになる。大平山荘と鉾立山荘の間にある駐車場付近では4mに達していただろうか。先週に引き続き快晴で今春は天気に恵まれていると思う。
道路から少し雪壁を登り斜面上に出て登行開始。最初の木村さんのペースはかなり早く、10分で100mぐらいの高度を稼いでいた。その後も快調にシール登行を続けて行くと前方にピークがあり、多くの山スキーヤーが巻き道を選んでいたのを直登した。実はこれは誤りで、長坂道からの尾根にある1660mピークに登っていた。巻き道をしっかりと辿っていた深井さんから「元気ですね(笑)」と冷やかされ頭をかくことに。
シールを付けたまま一旦コルまで下降して雪に埋まった御浜小屋に到着して大休止とした。行く手には鳥海山の展望が開け、明日滑る新山北面をじっくりと眺める。やはり急斜面で、去年はよく滑ってものだ、今年これを登って下りることができるのだろうかと少し不安になる。
さて本日の目標・文殊岳への登りであるが、扇子森を左に巻いた後、文殊岳までは右側斜面を迂回しながら登るとヤブ漕ぎを避けられそう、ということがはっきりと見てとれた。



文殊岳への登りは大量の汗をかきながらではあるが、狙った通りに南側を巻き気味に問題なく行けた。この日は無風快晴、全く穏やかな日和で、とても標高2000mとは思えない。休憩後山頂からは南西側に広がる大斜面を滑る。深井さんが「皆さん、ピークハンターですねぇ」とつぶやきながら頂上の休憩場所を木村さんと守谷よりもより東方に取られていたのはこの斜面を長く楽しむためだったらしい。先週の月山同様にどこを滑っても良い感じ。下へ下へといつまでも滑っていたいところだが、車は西にあるので徐々に西方にトラバースして行った。


広大な文殊岳」南西斜面

鳥海湖の南東付近でシールを付けて登行に変える。この登り返しは標高差130m程度だが、暑さのため思ったより疲れる。鳥海湖を回り込んでトラバースし、最後の駐車場までの下りに入る。この下りのルート取りを任せていただいた。だだっ広くてどこでも滑れるのだが、降りる地点が駐車場から遠いと歩く距離が長くなって大変なので慎重に登りトラックを確認しながら滑る。一度大きく外れたが、問題なく戻り無事に駐車場に滑り込むことができた。尚、この日の晩は当初祓川ヒュッテ泊を予定したが、鶴泉荘に変更した。翌日の新山北面滑降時が早すぎるとバーンが固くなりそうなので山頂正午着ぐらい、それを考えるとあまり早く出発する必要がない。温泉入浴時に鶴泉荘が空いていたので、そのまま宿泊した。


4月27日(日) 天候:快晴

鶴泉荘6:00=6:46祓川ヒュッテ(1160m )7:00〜9:06新山北面基部(1415m)9:35〜11:00岩場休憩地点(1881m)11:20〜12:35新山頂上(1261m)12:50〜新山北面基部(1440m)13:30〜14:40祓川ヒュッテ(1165m)

鶴泉荘6:00=6:46祓川ヒュッテ(1160m )7:00〜9:06新山北面基部(1415m)9:35〜11:00岩場休憩地点(1881m)11:20〜12:35新山頂上(1261m)12:50〜新山北面基部(1440m)13:30〜14:40祓川ヒュッテ(1165m)


GPSトラック(新山北面):登り=赤色、下り=青色

 新山北面を目指すこの日、鶴泉荘の朝食はキャンセルして出発し、祓川ヒュッテへ。多くの山スキーヤーが七ツ釜方面を目指すのに対して我々は西へと進路を取る。ここから北面基部までは標高差はほとんどないが、沢を越える場所の選択やヤブの抜け方がポイントとなる。


祓川から北面基部へ向かう


北面基部までトラバース気味の緩い登り

事前に木村さんが入手されていた本荘山の会ルートを目安に進んで行く。前方に同じ様な方向に進んで行く山スキーヤーがいるので、どうやら同じく北面を登って滑ることを考えているらしい。最後の尾根を越える箇所だけわずかにスキーを外す必要があるが、先行者のルート取りが素晴らしく、大きな影響は無かった。今後祓川ヒュッテから往復する際にはここのルート取りはポイントとなるだろう。尾根を乗っ越してからはトラバース気味にしばらく少し登ると北面基部に辿り着いた。


北面基部から上方を仰ぎ見る
(下は昨年滑り終えた際にほぼ同じ場所で撮影したもの)



前頁の2枚の写真は今年のもの(上)と昨年同じ場所に滑り降りた際(下)の比較である。少し今年の方が雪が少ないが、例年と比較すると多めのようである。2年連続で同じ北面基部に来るとは夢にも思わなかったが・・・
今年の写真中央で指差している方と話してみると先行の集団は本荘山の会とのこと。ルート取りが的確なハズである。新山北面は毎年結構な回数を登って滑られているということだった。基部から見る写真のように最初にまずドーンと急斜面を登る必要がある。去年、ここを降りて来てホっと一息ついたことを思い出すが、あの時と違って今年は気温が高く雪が柔らかい。シールで登ることもできそうだったが、先行者のツボ足ステップがあることからスキーを荷に付けて登り始める。途中で付けるのは面倒なので歩行アイゼンも装着した。登り始めの傾斜は35度くらいで、きつくはあるがどんどん高度を稼いでいくことができる。しばらくすると斜度が25度ぐらいに緩んで少し楽になる。前々ページの写真でわかる様に北面は急斜面、中斜面、急斜面の凡そ3部構成になっている。再び傾斜がきつくなっていよいよ上段の急斜面に差し掛かるとさすがに雪質も固くなってきた。ステップがあまり深く入らないのでアイゼンを出来るだけ効かせて登り、北面中央のリッジ下端に達した。ここで大休止して調子を確認し合う。深井さんは昨日から足の痛みがあり、ここから滑ることを決められ、木村さんと2人で上へ向かうことになった。どこまで雪が固くなるか、斜度が急になるかが焦点だが、このリッジ上を登るのであれば途中でスキーを履いて下ることもできそうである。急な箇所はストックの根元を持ったり、四つん這いになったりして乗り切る。雪面コンディションが良いとはいえ、転倒はしたくない。また、恐怖感が出ないようにと思い、下はなるべく見ないで登った。(下の写真はこの急斜面途中から木村さんが撮影されたもの)


北面登り途中からの下方の絶景

標高が2100mを過ぎた辺りでは斜度が緩み、北面の急登はほぼ終わるが、そこから先行者のうちの2人はさらに頂上直下の急斜面へと向かっており、その他はノドから回り込んでいた。木村さんに「どうします?」と聞いたら即座に「直登でしょう」。自分も同感で最後の試練を楽しむべく急斜面に臨んだ。しかし、実際に入ってみるとこの最後の壁は40度ぐらいの傾斜で中々手強かった。鳥海山の神様が与えた最後の試練を何とか乗り切り、新山頂上に立つ。新山北面を完登できた喜びから登ったスタイルそのままで記念写真をとってもらうことにした。


新山頂上での記念撮影

先に下った深井さんと交信し、登頂を伝えると「おめでとうございます!」との嬉しい祝福の声が。しかし、木村さんは冷静で「新山北面は下ってからが本当の成功です」との御返事。仰せの通り下りでツボ足では雪面をしっかりとらえられても、スキーを履いて転倒すると標高差800mを滑落してしまいかねない状況である。
昼食を簡単に済ませていざ北面滑降へ。上部急斜面はセイフティに少し回り込み勝ちに滑る。この時点で北面がしっかりエッジが利く状態であることがわかってかなり落ち着いた。昨年はエビのしっぽだらけの上部急斜面を横滑りで高度を下げ、スキーヤーズ・レフトの大斜面までずっと回り込んだが、今年はそのまま真下へと下ることができた。そのまま下まで下ることもできたが、やはりリッジより左側の大斜面が美味しいと思われようで、「左へ抜けましょう」という木村さんの指示。登りに使ったリッジも特に苦労することなく抜けていよいよ大斜面の滑降である。標高は約2050m、昨年はもっと左側だが、スタート地点の高度はそれ程変わらない。ここで「ビデオに映る人がいないと面白くないから」という木村さんの申し出で先頭を滑らせて頂くことになった。長年の夢を果たされたのに申し訳ないと思いつつもヘルメットカメラないからしゃあないか、と心の中で言い訳してドロップ・・・・いや素晴らしい。30度強の1枚バーンが延々と続く場所は他にそうは無いだろう。昨年は脚の疲れとアイスバーンでまともなターンにならなかったが、今年は実に気持ちよく滑ることができた。いつまでもターンしていたい気持ちを抑えて所々立ち止まるが、中々終わらない。最後の急斜面は深井さんからの交信で左側を滑り、大滑降のフィナーレを気持ちよく滑り終えることができた。
この後は往路に使用したルートをほぼ辿りながら祓川ヒュッテまで戻る。途中のハイマツ帯を越えるポイントは帰りでもやはりきちんと場所を特定するべきと思われた。
ヒュッテは畳の部屋で毛布が使える。(スキーヤース・ベットの部屋も別にある。)自炊場では合宿に使えるほど大きなガスコンロ二つの他、鍋・包丁・食器類など充実しており、1800円はとてもリーズナブルと思った。深井さんが美味しい豚鍋とうどんを作ってくださり、木村さんの長年の夢達成に祝杯を上げた。

翌28日は朝から風が強く、山に入るのはかなりきついと思われたので観光に決めて土田牧場や三崎公園を訪れた。海岸沿いの温泉で一風呂浴びて深井さん知人の安楽寺に御厄介になった。和尚さんが山スキーをされる方で、恐縮してしまうぐらいの大変有難いおもてなしを受け、今回の鳥海山の話で大いに盛り上がった。
翌29日は晴天だったが、山には入らず日本海を新潟経由で帰ることにした。生まれて初めて鶴岡〜新潟の海岸線のドライブで砂浜あり磯浜ありの中、途中道の駅に立ち寄りながら穏やかな帰路を楽しんだ。

(守谷 記)