<2003年3月号>
山スキーのガイドブック紹介(上)

菊地哲男編『スキーツアー』 山と渓谷社 2001年
技術、体力、意欲の揃った上級者を主対象として、比較的安全ながらマンネリ化した伝統的山スキー領域を、高難度ながら魅惑的なスキー・アルピニズム領域にまで昇華させた画期的なガイドブックです。登高、滑降、装備、サバイバル、雪崩対策等も簡潔に網羅しており、北アと上越以外は収録ルート本数が少ないものの、欧州アルプスも紹介するなど、質感の高い写真共々、山スキー滑降新時代に相応しいテキストと言えます。 (合田)

北田紘一編『日本スキーツアー ルート集』 山と渓谷社 1994年
コースガイドとツアー概論の二部構成で、ガイド編はカラー刷で見やすく写真が豊富です。グレード表示が滑り中心のアルペン的要素と、歩き中心のノルディック的要素の3段階評価となっており、ルートの傾向が把握できます。 掲載された50コース中、北海道が12コースと他書に比べ多くなっています。バリエーションコースの紹介が豊富ですが、詳しくは述べていません。手にとってみると楽しくなり、行ってみたいなと思わせるルート集です。                 (大坪)

全国勤労者スキー協議会・編著
『新体連・スキーシリーズU』
 新体連・全国勤労者スキー協議会 1989年
 白銀の大自然に飛び込み滑る「山スキー」をはじめ、「クロスカントリースキー」、「競技スキー」の3編に分かれています。「山スキー編」では用具と装備・食料、リーダーの役割とパーティーの作り方や安全対策、登行・滑降技術などのほか、山スキーコース紹介として、東北から関西までの29コースについてルート図付きで説明。写真も多く入っています。用具のうちスキー板と締具については、その後色々と改良されてはいるものの、入門者からベテランまで、是非お薦めしたい一冊です。             (倉崎)

北田哲郎編『スキーツアー 入門とガイド』 山と渓谷社 1988年
入門編とガイド編の二部構成。ガイド編は、東北・上越を中心にツアーの多様な楽しみを味わえる40コースが選ばれています。掲載順序は、入門コースから難しい順になっており、4段階のグレード評価と合わせ自分のレベルの目安になります。コーススケールの把握のため、登りと下り別の高度差・距離と標準所要時間に加え、コース中の要所の区間所要時間も参考になります。                     (大坪)

山下喜一郎・編著『全国スキーツアーガイド』 白山書房 昭和58年
全国の代表的な60のスキーコースを紹介。地域は、北海道(6コース)、東北(22)、上越等(7)、信越(10)、北アルプス(11)、白山以西(4)にわたっている。各コースについて、2万5千 地

形図に基づくルート図、大まかな所要時間、難易度(技術力・体力を含む)が示されています。読みやすい編集であるが、私の初版本では越後湯沢の、高津倉山など既にスキー場になってしまたコースも含まれています。出かける場合には、他の資料にも当たる必要があるでしょう。                   (榊)


<2003年3月号>
「雪山山行と遭難」  『岳人』 No。667 2003年1月号から抜粋
『岳人』2003年1月号の特別企画として、5件が掲載されています。このうち、当クラブに関係ありそうな3件について、要点を抜粋して報告します。冒頭の2件は、発生直後に会員の合田英興氏が関係者から情報を得て、会報に報告しています(注1)。そちらとあわせて読まれることを期待します。                   (榊)

八幡平・源太ヶ岳東面 雪崩事故 2001年1月13日(注2)
雪崩発生 雪洞掘削中その上部から雪崩れ、4人とも流された。そのとき同時に北側の斜面も崩れ落ち二つは合流してデブリは約300mの長さであった。4人は合流点より下、雪洞掘削点より193m、196m、201m(以上生存)及び216m(死亡)の間に流れ落ちた。デブリは風成雪のため軟らかかった。
事後の対応 ゾンデ(ブラックダイヤモンドのストックをつないだもの)捜索をしたが遭難者を発見できず、翌日朝の捜索で、216m地点で深さ約1mの地点で発見。
雪洞掘削地点の状況 傾斜:32.5°、弱層深さ1.5m以上(推定値)
当事者の言葉:ビーコンに対する認識の欠如、 ゾンデの訓練はしていなかった、弱層テストをしなかった、油断(これまで20回以上滑って雪崩れたことがなかった)

岩木山・鍋沢源頭 雪崩事故 2001年1月19日(注2)
雪崩発生 事故の2日前に降雨、その上に20〜30cmの積雪。その沢をトラバ−スしたことによる人為的誘発の板状表層雪崩(厚さ0.5m、幅50m、長さ100m)で、4人のうち、3人が流され2人が埋まる。
事後の対応:110番通報とパトロール隊への救助要請(スコップ、ゾンデ持参を!)、雪はコンクリートのように硬かった。一人は2時間後、もう一人は3時間後に、それぞれ遺体で発見された。
参加者のプロフィール:リーダーを始め全員スキー歴が長く、公認パトロール資格などを持っていた。
当事者の言葉:リーダーなど二人は雪崩講習を受け、ビーコン、ゾンデ、スコップを購入、パトロール組織の普及にも尽力していたが、当日はビーコンを持っていなかった。油断(雪崩常襲地帯ではないので安心していた。)

北アルプス・抜戸岳東尾根末端 深夜の雪崩埋没事故 2001年12月30日
雪崩発生 抜戸岳東尾根末端手前の広い緩斜面に幕営中、奥抜戸沢から落ちた雪崩が南側に回りこんでテントを襲撃した。テントはデブリの末端に埋まったので、大事に到らなかったが、5人はテントごと1.5張り分くらい流されて埋まった。一人がナイフでテントを割き、まず一人の仲間を引きずり出し、他の人もナイフを借りて這い出した。ヘッドランプを腕に捲きつけていた人は、点灯したので所在がわかった。
参加者の反省点:緩斜面であってもその奥に雪崩れる谷があるのを見落とした。弱層テストを重視していなかった。皆ナイフやランプを持っていたが、首や腕につけていなかった人は役に立たなかった。ビーコンはテントの中でもつけておくべきだろう。テントの外に出しておく、ピッケルアイゼンなどはまとめてスタッフバッグにでも入れ、口紐をテントのポールに結び付けておくのが良い。袋やザックに入れておかなかったものは、行方不明になった。(記事にはないが、皆、靴を履いたままシュラーフに入っていたと思われる)

(注1) 合田英興「雪崩ビーコンがあれば助かった筈の雪崩事故」
『LA RANDONNEE』、 No.207  p.17 2002年2月
(注2) 記事では事故発生が2001年となっているが、2002年の誤りと思われる。


<2003年3月号>
新刊紹介 (山と渓谷社 ホームページから原文のまま転載)
『ドキュメント 雪崩遭難』
阿部 幹雄 著
雪山の恐ろしい雪崩遭難の実例を検証、事故の実態を解明する。最近、起きた雪崩事故のなかから、雪山登山、スキー、山ボードなどタイプ別に、雪崩発生、捜索救助に至るまでの経緯を明らかに雪崩事故の原因と対策を検証する読みもの。遭難者たちの行動のみならず、雪崩に遭遇したときの心理まで詳辻。地図、現場略図、写真を多用し、理解しやすい構成となっています。
書籍コード:140030 定価 1600円 (外税)   四六判 280ページ
ISBN4-635-14003-2   発行 2003年01月30日


<2002年3月号>
雪崩関連の情報 木村 彰
『決定版 雪崩学』 雪山サバイバル-最新研究と事故分析
北海道雪崩事故防止研究会編  山と渓谷社  2002年2月    1900円
朝日新聞 2月24日朝刊 スポーツ欄「雪崩 古い知識は命取り」でも紹介されています。
http://www.yamakei.co.jp/search/search.html