2013年 4月鳥海山・新山北面山行報告

鳥海山・新山北面滑走

概要

日程:2013年 4月26日(金)前泊~29日(月)

参加者:石黒(L)、藤澤(SL)、角田、守谷

4月26日(金)~27日(土):曇時々雨(停滞)

 26日晩に角田車で東京を出発し途中仮眠の後、酒田市に入る。鳥越川沿いの大水場でのテント泊に備えて晩飯と酒等の買い出しをする(於:にかほ市金浦のマックスバリュー)。酒田入りしてからずっと天気が悪く、車デポ地の獅子ヶ鼻(未舗装林道終点)まで行くが、冷たい雨が降り視界も悪く本日からの山中入りを見合わせる。急ぎ宿泊地とした西浜のログハウスは2階建てで6人分のベッド付で計\17,000。非常に快適かつ周りを気にせず酒宴が可能なので、ランドネ山行にこうしたコテージは大いに使えそう。

4月28日(日):曇後晴れ(アプローチ)

西浜ログハウス=金浦マックスバリュー(買い出し)=獅子ヶ鼻(510m )12:50~14:40大水場付近(920m)

 この日午後から好天に恵まれるとの予報から翌日にかけての新山北面アタックを決行(但し、この時点では守谷はまだ千蛇谷を独り滑るという消極策を胸に秘める・・)。前日と同じマックスバリューで買い出しの後、獅子ヶ鼻からアプローチを開始する。車デポ地は鳥越川沿いの標高510mだが、今年は積雪充分でここからシールを着けて山行スタート。GPSでルートを確認しながら緩やかな樹林帯をシール登行する。通常はヤブ漕ぎで苦労するそうだが、今年豊富な積雪に助けられ、快適にシール登行できた。550~600mぐらいに急斜面があるが、落ち着いてクリアした後は鳥越川沿いに登り、順調にテン場に到着した。通常は近くで沢水が汲めるはずだが、今年は大水場まで上がると鳥越川は完全に雪で覆われていたおり、雪を溶かして水を使用した。ランドネパ-ティは標高920m地点でテントを張ったが、もう少し上の930m付近に別パーティが幕営していた。
 夕方には完全に晴れ上がり、北面を眺めることができた。正面から見ると当然壁に見えるのだが、それ以上に上部は岩が露出していて転倒したらかなりヤバいことになりそう。明日はやはり千蛇谷を降りようと思った。

4月29日(月):快晴(北面アタック)

大水場(910m)5:10~6:25休憩地点(1360m)6:40~9:10新山山頂(2236m)9;50~10:15休憩地点(1408m)10:40~11:10大水場(910m)11:50~12:20獅子ヶ鼻(510m)=21:45東京

 昨夜決めた通り朝4時に起床する。日の出が4時46分なので既に薄暗い。予報通り快晴に恵まれて、ここに来ることができた喜びを噛みしめる。パンとコーヒーの朝食を済ませて新山へ向かうとすぐに北面が視界に飛び込んできた。見通しが良く登り易かったが、次第に雪質が固くなりカチカチのアイスバーンとなる。
 さらに徐々に斜度が上がり先頭の石黒さんから離れて行く。と、シールがいきなり効かなくなって転倒、氷の斜面をズルズルと落ち始めてしまった。何とかスキーを下にして止まったが、自分で止めることが出来ない状況というのは怖いもの。藤澤さんから「危ないからクトー付けてください!」と言われたが、もう少し早目に装着するべきだっただろう。石黒さんはこの後もシールだけでさらに固くなった斜面を登っておられたが、登行テクニックの違いを思い知らされた。クトーを装着して安定したが、一度滑落するとどうしてもびびってしまう。時々クトーの効きを確認しながら慎重に高度を上げて行った。下から吹き上げる風は烈しく斜面上の雪粒が滝のように千蛇谷を登って行く様は麓で桜が咲く麗らかなGWとは思えない光景。

 谷をさらに詰めて新山の裏側(南側)に回り込むと、雪面は堅い氷か地吹雪あられのどちらかの層という状況になる。風が物凄く強く、手が冷たいわ、寒いわで非常につらい状況になり、手袋を2重にしてアウタージャケットのフードを被る。最後の新山への登りは少し戻り気味にトラバースした後、直登した。頂上に着くと意外にも風は収まり、陽が当たってかなり暖かくなった。到着は11時過ぎ。大水場から標高差1300mを4時間で登り切ったことになり、快調なペースと言えるだろう。新山最後の登りぐらいから北面を滑る気持ちが湧いてきたのだが、未だ決心が着かずにいる所へ、角田さん、藤澤さんから「北面行きましょう!」との声が。石黒さんからは「団体行動なので」と念を押された。これで決心が付いて北面にチャレンジする気持ちを固めた。
 石黒さんを先頭に北面上部の左側へ落ちるクーロワール(約45度)を横滑りで下降する。ここは「エビのしっぽ」がびっしり雪面に張り付いており、4人でひたすらエビを削り落としていく感じ。止まると上から大量のエビさん達がスキーに積もってくる。固いデコボコ斜面の横滑りは酷いバイブレーションで足への負担が非常に激しいが、ターンするのはリスクが高いのでしばらくは我慢の下降に専念する。
 行き着いた先はパラダイス!! 山スキーヤーにとって最も快適な30~35度程度の斜面が遙か下まで延々と続く。「木村さん、すみません。お先にいただきます!」と念じて滑り始める。頂上までのシール登行と先ほどのエビ狩りで相当足が疲労しており、上部のアイスバーンはセイフティにズラしながら滑るが、徐々に雪が柔らかくなり雪面を切れるようになっていく。かなり降りたと思ってもまだまだ斜面は続くという感じでここが日本随一の大斜面であることを実感する。下部まで降りて台地から新山を振り返ると今滑ってきたルートがしっかり確認できた。今季No.1の素晴らしいバーンに感嘆の念を禁じ得ない。危険な急斜面を降りた安堵感よりも壮大な斜面を滑った充実感が遙かに大きかった。
 ここからはテン場を目指して出来るだけ左にルートを取る。さすがに下部は気温が上がって雪が重いが、ノートラックの斜面に4人でシュプールを描きつつ効率良くテン場に出ることができた。到着時刻は11時10分、休憩入れて往復6時間。この日、酒田泊であればもう1本行けそうと言ったら言い過ぎだろうか。テントを回収してから獅子ヶ鼻までの下降も豊富な残雪のおかげで快適かつスムーズに終えることができた。
本山行は初日の天気が悪く、一時は湯殿山を軽く滑って終わる可能性もあったが、最終日の好天を狙ったアタックが見事に決まり大変思い出に残る山行となった。石黒リーダーの経験に裏付けられたルート取りと判断力に敬服した次第であった。(記録;守谷)

【リーダーから&備忘録】

・新山北面を滑るには、主に
①祓川から北面基部(1400m)まで横移動し、新山へ直登する。
②祓川から七高山へ登り、外輪を降りて新山へ登る。
③今回のコース
があります。テント泊を厭わなければ③が鳥海山麓の自然を感じながら、静かに登れるのでお薦めです。
・本文中にもありますが、今回は豊富な残雪のおかげで特に下部でスムーズに行動できました。行動タイムは追い風参考記録と考えてください。
・山頂直下の急斜面下にはイルンゼ状の岩場があります。今回は上部を横滑りで躱しましたが雪が少ないと行き詰まるかもしれません。上記の①、③コースなら滑る斜面を確認しながら登れます。状況を見ながらコース取りを検討してください。
・天気が悪かったのでコテージに泊まりましたが、西浜コテージ村はテント用のフリーサイト(600円/人)もあります。温泉施設が隣接していて快適そうでした。
・酒田での食事、お土産は『酒田海鮮市場 とびしま』。観光客向きの施設で探せばもっと良いところがありそうですが、とりあえずお手軽です。

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