2022年 1月 セルフレスキュー講習・前武尊山行

セルフレスキュー講習・前武尊 会山行

概要

日程:2022年1月15日(土)~16日(日)
参加者:阿部(リーダー)、八木(サブリーダー)、藤澤、安尾、常本、伊藤(ゲスト)

1月15日(土):セルフレスキュー講習

天候:曇一時雪
 前日に準備の為オグナ武尊スキー場に入る。この日は大雪で一日中雪が降りしきり、夕方までパウダーを滑りまくる。15時にビーコンを埋める為会場の第四駐車場に移動し、スキー場の駐車場連絡コースの両脇に合田機、八木機を掘って埋め戻した。足跡が分からない様に雪を均して、このまま降り続き綺麗に跡形がなくなる様に祈った(笑)。以前雪崩ネットワークのキャンプに参加した時も雪崩講習は前武尊に行く山中で実施されましたが、ビーコン探査は二三日前に埋めたらしく全く痕跡がなく実践に即したものでした。

15日は関越道の渋滞で皆さん宿「みやま」に集合が少し遅れましたが、11時前には会場の第四駐車場に入る。
早速ビーコン探査を実施します。昨日のお祈りが通じたのか、埋めた場所は全く分からない状態になっていました。
実際に雪崩に合って仲間が埋まってしまった場合、雪崩に飲まれた消失点を確認する事がその後の捜索の重要なポイントとなります。したがって、特に雪崩リスクが高い場所を通過する場合、基本一人ずつ滑り、仲間の位置を確認することが必要です。
今回は消失点がココと分かった地点から探査開始します。合田、八木の二人が埋まったと仮定し連絡コースが雪崩たとして2班に別れ探査開始です。
ビーコンはどの機種でも40m以内は探査出来るので、人数がいる時は別れて捜索する方が効率的です。ちなみに私の持っているマムートは50mで、最新機種は70mまで反応するそうです。又新しい電池に入れ替えてから300時間は発信でき、ビーコンの電池表示が85%を切ると捜索モードに支障が出るので電池交換する方がいいようです。
藤澤、伊藤組のビーコンが早速合田機に反応した様です。1⁓2mまで近づいたらプローブの準備です。この時むやみに掘出したくなりますが、プローブで位置を特定しないと無駄に時間を使ってしまいます。どのくらいの深さまで埋まっているか分からないので、落ち着いてプローブを差します。
この後人数がいる場合はVベルト方式で埋まった仲間を掘出します。
もう1班の阿部、安尾、常本組も合田機に反応した様です。この時複数探査で重要なのが自分のビーコンのチェック機能を使うことです。これを使わないといつまでも最初の機種に反応してしまい次の捜索に向かえなくなります。チェック機能はそれぞれの機種で違いますので、ご自分の物は確認してください。
もう一つ捜索の時にリーダーを決めますが、どう判断して指示するかも重要です。合田機は浅い場所に埋めてあり直ぐ掘出しましたが、深い場所に埋まった場合は全員動員してVベルト方式で掘出す様に指示します。そしてビーコンの発信を止めてから次の行動に移ります。
阿部、安尾、常本組はチェックを入れて八木機捜索に向かいます。直ぐには反応しなかった様ですがコース左側で反応した様です。コースから少し下の木の影で無事発見。連絡コースは圧雪してあるので歩き安いですが、それを外れると深雪にズボズボハマってしまい動くのが大変な様でした。現場では、ある程度近くに行くまではスキーで行動した方が良かった様です。(勿論雪崩現場ではスキーが使えない場合もあります)
プローブも、それを持ってはいても、使い方が分からなかったり、緊急時にしか使わないので、実際に使ってみるこの訓練も少しは役にたったかと思います。
雪崩現場のタイムリミットは15分と言われていますが今回の訓練ギリギリ救出に成功です。

次にVベルト方式の掘出し訓練とツェルトを使った搬出訓練、雪洞を掘ってのビバークの仕方を阿部さん講師で少し山の中に入って実施しまし      た。先ずはザックを少し深く埋めてプローブを使って差した時の感触を確かめます。
Vベルト方式の掘出しは先頭の人が掘出し、後ろの人が雪の掻き出しをして時計回りに先頭の人を交代します。この時スコップは樹脂製の物は雪崩の固い雪では使えない事、又ショベルの大きさもある程度の大きさのものでないと掘出しに時間が掛る事など確認出来ました。
ツェルトを使った搬出訓練では、藤澤さんに負傷者役になってもらい、ツェルトを使った包み方や、カラビナで玉を作りスリングでクローブヒッチ(二つの輪を重ねてカラビナの玉を結ぶ)を使うとロープで結ぶより引っ張る取手が作り安い事など、学びました。
雪洞掘りは崖に横穴を掘り、スキーにツェルトを巻き付けて穴の上からツェルトを垂らして穴を塞ぐやり方を実践しました。いい感じで一人用の雪洞ができ、これなら一晩凌げそうな感じでした。雪洞の中はスコップで均すと雫が垂れにくく、快適に過ごせる様です。
現場訓練の最後に、伊藤さんの山行デビューに向けて、キックターンの練習を少しきつめの斜面で行い、明日に備えました。

宿に戻り花咲の湯で汗を流した後、夕飯前までの時間でロープワークの講習です。
阿部さん講師で、カラビナを使っての簡易ハーネスの作り方や、ロープで崖を登り降りして救助する時に使うムンターヒッチやクローブヒッチの結び方、使い方を教わりました。中々難しく、1回では覚え切れないので、例会でも続きをやって頂くのと、自分でも繰り返し練習しないと身につかないと感じました。
一日を通して、この日のセルフレスキュー講習はなかなか中身の濃い内容だったと思います。阿部さん、参加の皆さんありがとうございました。

この後、宿の夕飯は心を尽くしたご馳走で、特に宿のおばあちゃんが作った野菜はどれも地味深くて、一升瓶までサービスして頂き感謝、感謝です(合掌)。
(八木 記)

1月16日(日):前武尊山行

天候:快晴

旅館みやま8:50 = オグナほたか第六リフト降り場10:00~10:10 … 前武尊岳11:00 - 荒砥沢滑走1800mまで12:00~12:30 … 前武尊岳13:45 - 十二沢滑走 - スキー場14:20

 旅館の送迎車でスキー場レストハウス前まで送っていただく。セルフレスキューの翌日であり、登山計画書をスキー場備え付けのポストにも提出。早々に、回数券を購入してリフト最上部に到着。地図による、本日の行動予定を説明。ビーコンチェックも受信、送信と2回実施。リスク回避の重要性を認識するために、先行者のトレースを使用すると判断した要因や、先行者がルートの山側に居る場合など、行動の注意点などを確認しながらのハイクアップとなった。微風と晴天ですぐに汗が噴き出す。昨日の深雪キックターンを習得した伊藤さんは、富士山が望めると眺望できるまで余裕が出ている。
ボーダーのスノーシュー、山スキーのトレースと入り乱れているがルートの取り方はそれぞれで、自分との違いなどを認識しながら50分で前武尊岳に到着。荒砥沢下降に向け、剣ケ峰下部に移動。全員が、スコップ、プローブを出し弱層テスト。スノーソーで雪柱を作るなど、テキストでは得られない実務講習となった。藤澤さんを先頭に滑り出し、1800mあたりで集合をお願いする。なんと、小生のブーツが滑降モードにならない。おいしい斜面をへっぴり腰で滑るのは嫌なので、スキーを外し、丁寧に不具合を直す。この状況を無線で知らせ、無線機の有難みを再認識した。
 今回の荒砥沢で感じたことは、登り返したグループは我々と、他に1組と思われる。そのまま、荒砥沢を下るトレースと、家串山から西俣沢を滑り、登り返すのかはわからないが家串山の尾根を乗越して荒砥沢に滑り込み、そのまま荒砥沢を下降しているトレースが多かった。以前は、この尾根には雪庇が張り出していたが、今回大きな雪庇は確認できなかった。時期と、コンディションによっては、、このコースもチャレンジしてみたいと思った。
 昼食後登り返し開始。前武尊岳まで1時間15分。山スキー初めての伊藤さん、滑りは問題ないし登りもこのペースなら合格です。入会をぜひご検討ください。
片品村は、木曜日に大雪警報が発令され、日曜日は快晴であったが気温が上がらず、十二沢もそこそこの雪質を楽しみスキー場に戻った。
 旅館に戻ると、手打ちうどんを振舞われ美味しくて遠慮なくお代わりをいただき、帰路につきました。
(阿部 記)
  
【セルフレスキュー講習会に参加させて頂いて】
この度はゲストであるにも関わらず貴重な講習会に参加をさせて頂き、ありがとうございました。
今期からBCスキーを始めるにあたり、道具があれば先ずは何とかなるのかと安易に考えていたのですが、12月14日開催された「アバランチナイト」を阿部さんに紹介され視聴をしたことにより、興味本位で大変なことを始めてしまったなぁと改めて登山道とは違うBCの恐ろしさを感じていたところ、当該講習会の開催を伺い参加をさせて頂きました。
先ずは皆さんの考えられるBCに於けるリスクに対しての仲間と自身を守る為の姿勢に感心すると共に、手つかずの自然の雪山では登山道やスキー場のゲレンデと異なり人の手によって安全管理がされていないために潜んでいるリスクを自ら予測して回避したり、危険な状況に遭遇してしまった際には自身で対処する必要があることを、改めて感じさせられました。
八木さんの前日の準備による「ビーコン捜索」は実際の雪崩をイメージ出来、過去の体験とは比べものにならず方向・距離だけではなく深度も体験させて頂きました。
埋没者掘り出しに必要なV字ベルトコンベア、ツェルトを使った負傷者の搬送方法、行動困難時における雪洞の掘方、実際に滑走時での弱層テストと本当に貴重な経験をさせて頂きました。
この経験は誰もが願うように使わなければ一番良いものの、いざというときには「あの時やったよなぁ」と必ず役に立つものと冬山を楽しむための財産となりました。初日の訓練ばかりか、実際にBCに入る際のGPSや無線を始めとする皆さんの装備とビーコンチェックなど、これからBCスキーを始める私にとって全てが貴重な体験でした。
同時に、まだまだクレパスや雪で覆われて見えない地形のリスク、天候の急変、高度や場所で変化する雪質等々危険が沢山あるのだろうと更に怖くなったのが正直な今の気持ちです。
「山スキー」即ちいつどのように管理区域外で楽しもうと個人の自由である反面、リスクも増大し高度な危険をはらむBCでは自らの意思で立ち入ることを鑑みると、安全管理もまた個人の責任のもとに成り立つことであるのかと感じた次第です。
(伊藤 記)