2019年 3月 乙妻山・黒姫山

乙妻山・黒姫山

概要

日 程:2019年 3月 2日(土)~ 3月 3日(日)前夜発
参加者:八木(CL)、土屋(SL)、角田、守谷(記録)

3月1日(金)

 土曜日に日帰りで乙妻山北東斜面を狙うという、少しタフな山行を控えている。早朝出発が求められるために前泊は出発地点の戸隠大橋に車中泊することに決定。角田車に東京・埼玉組、守谷車に神奈川組が分かれ現地集合。八木さん宅まで迎えに行って圏央道経由で上信越道に入ると丁度12時過ぎに信濃町ICを出ることができた。電話連絡すると角田車は渋滞で高速に乗るのが遅かった模様。先に戸隠大橋に着いて用意をしながら何時に到着できるか案じたが、そこは音速の角田車。みるみる差を詰めたらしく八木さんと軽く寝酒を飲んでいると、すぐにエンジン音とともに現れた。

3月 2日(土) 乙妻山北東斜面 晴れ

戸隠大橋(1140m)6:35 … 佐渡山のコル(1580m)8:20 … ニセ梯子尾根取付き(1470m)8:45 … 本梯子尾根取付き(1468m)9:20 … 12:30乙妻山頂(2318m)12:55 - 氷沢川登り返し(1385m)13:40~14:00 … 佐渡山のコル(1580m)15:00~15:15 - 0戸隠大橋15:4=一冨久

 前泊を大橋で過ごしたのは我々だけだったが、朝になると続々とデポを始める車が到着し始めた。晴天予報なので多くの山スキーヤーが押し寄せているようだ。特に順番を決めずに歩き始めると、今回山スキー歴最長かつ最年少の土屋さんが「みなさん御速いですねぇ」と少し離れて後を歩いている。「え~土屋さん、三味線弾いてる?」と思っていたら、急登に差し掛かると加速し(というかこちらが減速し)、50代トリオは一気に置き去りにされてしまった・・・。
 先週から山も一気に春めいて昼間は雪解けが進んだのだろう。佐渡山への登り斜面は朝晩の冷え込みで固まっている。しかもトレースの傾斜が少しきついめで木の根を回避するのに少しズルズルしながら何とか登っていく。戸隠大橋の台数から考えると山スキーヤーの数がかなり減って、多くは黒姫方面に向かったものと思われた。尾根の急登からトラバースを経て佐渡山コルに辿り着くと、高妻から中妻への見事な稜線が現れた。登る梯子尾根を確認し、「あそこを登るんか~」と急登に溜め息が出る。
 山行前から佐渡山コルからの下りでシールを外すかどうか考えていたが、アイスバーンのため迷わず着けたままで下り始める。すぐに氷沢川まで辿りつき、川を渡って梯子尾根の取付きへ向かう。ここまでは極めて順調。しばらく行くと川が右に曲がり、梯子尾根の末端と思われる箇所が見えて、土屋さんは「そのまま取り付けるんじゃないでしょうか?」と聞いてきた。これまでのブログの情報では、少し先から取付いていたために「多分回り込んだ方が登り易いんじゃない?」と返し、もう少し氷沢川を下る。そこには想像した通り、いかにも登って下さいと言わんばかりの緩斜面があり、迷わず取付き点とした。思ったよりアイスバーンが厳しかったために全員クトーを装着。土屋‐角田‐八木‐守谷の順番で登り始める。恐らく標高100mぐらいで尾根の上に出られるだろう。うん、いい感じで進めている・・・・
 と、尾根上に辿り着いた先頭の土屋さんから「尾根を間違えています・・・」との声が。どうして???だったが、本当に尾根が下っている。慌ててGPSで確認すると、我々は大きな沢を隔てて1本南の尾根(仮称;ニセ梯子尾根)を登っていたのだ。目の前には沢を隔てて中妻山に続く本梯子尾根が横たわっている。何という失態。どうして取付きでGPSを確認しなかったのだろう、と悔いた。しかし、落ち込んでも仕方が無いのでクトーを外し、シールは着けたままで登った斜面を滑る。みんなどっと疲れただろうなぁ。
 気を取り直して本梯子尾根の末端まで行くと一本のトレースがある。今度こそ本物であることをしっかりとGPSで確認し、再びクトーを付けて登り始める。土屋さんのハイペースに50代トリオも頑張って付いて行く。梯子尾根は地図でもわかるように急登であるが、下ることが無い。このため思いのほか高度を順調に稼ぐことができた。取り付きから山頂まで凡そ標高差850mほどあり、丁度その中間近くで急登が一息つく(1912m付近)。ここで樹林帯から脱して中妻山までの広大な斜面が眺められ、一息入れることにした。前方では先行者が2名ほど。途中の急斜面では多少苦労しているように思われた。
 視界が開けたこと、頂上まで半分来たということで少し気分がラクになったが、先行者が苦労していた急斜面に差し掛かると、かなりクラストしていてクトーを付けていても少し登るのが厳しく感じられるようになる。標高2000mを少し過ぎた辺りで土屋さんから「右の尾根に出られたらいいんですけど・・」という提案。ここは山行前から右へ抜けられたら後々ラクになる事を確認しており、乙妻北東斜面と中妻沢を隔てる尾根は傾斜が若干緩い。八木Lにも確認を取って土屋さんは右尾根へトラバースしていく。エッジを雪面に食い込ませて安定を図りながら白樺が印象的な平地に抜けることができた。尾根を少しだけ登り、乙妻山頂直下のコルまでトラバースし、さらに頂稜を辿っていく。北東方向には妙高から火打、焼山、金山、雨飾の稜線。そして西側には後ろ立山連峰が眺められ、さながらビクトリーロードを歩く気分。
 ゆっくりしたい山頂だけれど、登り返しもある長丁場のルートであるため、すぐに滑降に取り掛かる。土屋さん&角田さんは山頂直下からドロップ、八木さん&守谷はコルから滑り、無線を取り合いながら下で合流することに決まった。所々アイスバーンがあるものの北東斜面はやはり素晴らしい。鳥海新山北面のような一枚バーンではなく斜面に緩急がありその度に足を休めながら高度を下げていく。若干足の疲れを感じながらも国内有数のこの斜面を存分に楽しんだ。
 標高1743m付近で一息入れて行動食を摂りながら土屋さんと後の行程を確認する。北東尾根下部は左岸が快適だが、どこかで右岸に渡らなければならない。残り300mは少し沢の状況を見ながら雪が切れる前に渡りましょうということで意見がまとまった。下りついた氷沢川には自然にできたと思えない林道のように歩きやすい地形になっていた(帰宅後「山と高原地図」で確認すると笹ヶ峰から林道が登っていることを確認した)。
ここから辛抱の200m登高が始まる。乙妻に行った人は口を揃えて「最後の登りがバテる」と言っていたので、予め心して取り掛かった。梯子尾根の分岐を過ぎて往路でシールを着けたまま滑った斜面を一気に登り切った。佐渡山コルで最後のシール外しを行い、もう後は下るだけ。しかし尾根を外れる場所を行き過ぎるミスコースが多発しているので、ここを注意しながらクリア。林道に出たらスキーが滑るのに任せて大橋まで下った。
 八木さんが予約して下さった「一富久」は焼肉屋がやっている素泊まり宿。近くの公営温泉(250円に割引!)で一風呂浴びた後にお待ちかねの焼肉。山行中は行動食で炭水化物ばかり食っていたので一層箸が進む。男4人でしこたま肉食って、しこたまビール飲んで素泊まり料金含めて6000円はかなりコスパ良いのではないでしょうか。肉もかなり美味しく、乙妻大斜面を滑った後に焼肉という何とも贅沢な山行に全員満足した。

3月 3日(日) 黒姫山東尾根 曇り時々晴れ

一富久=黒姫ゲレンデ(4~5本リフトを使って滑走) … ゲレンデトップ(1193m第2ペアリフトトップ)9:30 … 旧リフトトップ(1548m)10:50 … 黒姫山外輪稜線(2027m)12:35~12:55 - 沢越地点(1540m)13:15 - ゲレンデ最下部13:40=帰京

 前日に乙妻山という少しタフな山行をこなしたためか(その後飲み疲れたためか?)、体が重い。最近は疲れて日曜はゆっくり観光して帰ることも多かったが、天気も持ちそうなので黒姫に行くことに決定。黒姫のリフト券は1回券の販売がなくなり、少なくとも半日券を買わなければならないという情報を事前に得ていたため、ゲレンデを1時間ほど滑ってからハイクアップすることにした。最近は、黒姫山でBCを楽しむ人が増えたために、少しでも多くお金を取ろうという考えなのだろうか?第2リフト上からは閉鎖された最上部の旧ゲレンデを登り始める。今日はアルコール充電たっぷりの角田さんが快調に登っていく。
 元々ゲレンデだった斜面なので見通しが効き登り易いが、見えているリフト小屋が中々近づかない。歩き始めは曇って少し寒かったが、徐々に日が差してきて暑くなっていく。旧ゲレンデトップで一息ついて残り標高差を確認すると、まだ450mほどあるという。さすがに昨日の疲れが溜まっていて急斜面では意外に苦労するが、それでも12時半には黒姫外輪の稜線に辿り着いた。本日滑る斜面は黒姫の東側になり、この辺りは適度な疎林が全体的に広がっている。ゲレンデから登り始めてサイドのパウダーを楽しめるので1~2月に多くの人が訪れるのも納得である。
 シールを付けてしばらく休憩しながら滑るルートを確認。角田さんと八木さんはルート経験があり、最終的に尾根を滑って 1396mの台地を目指し、ゲレンデ下部に出るルートを取ることに決まった。雰囲気の良い疎林帯だが、さすがに今日はクラスト気味。高度を落として行っても快適なザラメ雪にならず、モナカ状態になってしまい、テールが引っ掛かる。昨日の疲れもあり、事故を起こさないようにセーフティにシュテムを使いながら下って行った。台地に出てもう一度ルートを確認すると、尾根を下方まで降りて少し歩きを入れてゲレンデに出るか、すぐに左側の沢を渡ってゲレンデに向かうかのどちらかになる。歩きは少ない方が良いということで沢ルートを辿ったが、沢の降り口が急でかつ雪が固かったので多少の緊張を強いられた。最後はゲレンデの緩斜面に出て駐車場まで滑り込んだ。
 今回の乙妻山・黒姫山は初めて山行を共にする方、久しぶりに山行を御一緒する方同志だったが、登るにつれて理解が深まって、とても充実した素晴らしい山行になりました。全員、パウダーの乙妻を再訪したくなったと思います。山行を提案して皆をまとめって下さった八木さん、終始リードして引っ張って下さった土屋さん、陰ながらずっとサポートして下さった角田さん、ありがとうございました。

(守谷 記)